◼️️️【赤木越】発心門王子との分岐から湯の峰温泉へ
滝尻王子から熊野本宮大社に向かう中辺路の終盤にも、船玉神社付近に発心門王子方面と赤木越の道に分かれる分岐がある。どちらも熊野本宮大社に向かう道だが、北回りの発心門王子ルートがメインルートで、南回りの赤木越ルートが派生ルートとなる。
赤木越は分岐から南へ入り、湯の峰温泉へと向かう道のりだ。歩く人は少ないものの、それだけに森と道の雰囲気がフレッシュに感じられ、尾根を吹き抜ける風はとても気持ちがいい。
赤木越の分岐から湯の峰温泉までは、距離にしておよそ7km、所要時間は3時間ほど。山と峠のアップダウンを繰り返す熊野古道において、この区間は比較的ゆるやかな地形だ。世界中からハイカーの集まる中辺路だけれど、こちらの道は静かに歩けるのが個人的にお気に入り。
ゴールには、日本最古ともいわれる湯の峰温泉が待っている。古くは熊野詣の湯垢離の場であり、餓鬼阿弥の姿となって苦しんだ小栗判官がもとの姿に戻る“蘇りの湯”として知られた、紀伊半島屈指の名湯だ。入浴できる世界遺産「つぼ湯」や、日帰り温泉もある。
◼️️️【大日越】湯の峰温泉から大斎原・熊野本宮大社へ
じつは、赤木越は湯の峰温泉で「大日越(だいにちごえ)」というルートとつながっている。大日越から大斎原(おおゆのはら)の近くまで進み、そのまま熊野本宮大社まで行くことができる。これによって発心門王子からのメインルートではなく、赤木越と大日越を組み合わせた派生ルートによる熊野詣ができるのだ。
大日越は、その名の通り大日山を越えるルート。短いながらも急な山道をゆく。湯の峰温泉と熊野本宮大社を約3kmで結び、1時間強で歩く。
中間点は鼻欠地蔵の摩崖仏(まがいぶつ)。ここをピークに一気に下り、熊野本宮大社の旧社地「大斎原」に出る。大斎原はかつて社殿のあった場所であり、いまなお神聖な雰囲気を感じられる聖地のひとつだ。かつての跡地で静かに手を合わせてから、いまの熊野本宮大社に詣でたい。
◼️地味だが、静かなことが魅力のサブルート
今回紹介した4つのサブルートは地味に感じるかもしれないけれど、逆に素朴な古道の風景が心地よい。歩くことそのものに集中できる静かな道という点でも、自分と向き合う絶好な時間となる。
総距離100kmにも及ぶ中辺路は、メインルートとサブルートをどのように組み合わせるか、歩き旅の計画を立てる時間も楽しいもの。ぼくはその時間が好きで、同じ道を、異なる季節に、何度も歩いてきた。いまの自分と向き合う貴重な機会に感謝をして、これからも熊野古道を歩くつもりだ。