厳しい残暑が続いていますが、気がつけばもう9月ですね。山の上では、少しずつ草紅葉が始まり秋の気配が感じられるようになりました。
振り返ってみると、今年の夏は雨の日も多く夏らしい晴れの日がすこし少なかったように感じました。それでも、晴れた日には照りつける日差しと、空いっぱいに広がる入道雲。暑さも忘れて思わず見とれてしまいます。そして夕方になるとヒグラシが鳴き始め、ゆっくりと暮れていく夏の夕暮れが心に沁みました。
直売所には色鮮やかな夏野菜がずらりと並び、その鮮やかさにつられて、つい買いすぎてしまいます。そんな何気ない風景に、「今年も夏が来たな」と感じていました。今年の夏も、ビタミンと食物繊維をいっぱい摂れたかな(笑)。
■尾瀬学校に今度は先生として帰ってきた!
夏休みが始まると、山でも子どもたちの姿を見かけることが多くなってきました。この時期の尾瀬には、学校行事で学生たちがやってくるのです。
先日、学生たちを連れて尾瀬を歩きました。そんな学生たちを案内していると、私も中学生の時に尾瀬を歩いたなぁと思い出します。当時は「尾瀬学校」という名前で、私も学校行事の一環として尾瀬を訪れていました。それから時が経ち、今度は自分がガイドとして学生たちを尾瀬に案内する立場になりました。
あの頃の私は想像もしていなかった未来です。まさか自分が、こうして尾瀬で子どもたちを案内することになるなんて。なんだか不思議で、少し感慨深く感じます。
「今日は上手にガイドできたかな?」と、当時の自分に聞いてみたくなります。
■昔の自分と重なる、尾瀬の時間
今、子どもたちを案内していると「私もこんな感じだったのだろうな」と、当時の自分と重なる瞬間があります。
歩きながら友達と話したり、少し進むたびに「ガイドさん、あとどれくらい歩きますか?」と言ったり(笑)
正直、私はあの頃いつ(何月)に尾瀬へ行ったのかも、どこを歩いたのかも、はっきりとは覚えていません。覚えているのは、尾瀬ヶ原でみんなとお弁当を食べたこと。鹿の食害について話を聞いたこと。そして、オコジョを見つけたくて必死になって探していたこと。
そう、その頃の私はオコジョに夢中でした。愛くるしい姿に幻想を抱いていましたが、今は獰猛な一面もあることを知っています。そして、ガイドになった今も、オコジョを見つけると嬉しいだろうなぁと思いながら探しています。でも、実はまだ一度も見つけられていません。いつか自分で見つけてみたい。小さい頃から続いている、ひそかな目標です。
そんなふうに今になって振り返ってみると、当時の尾瀬で過ごした時間は、私の中の記憶のほんの一部でしかありませんでした。
子どもたちにとっても、尾瀬で過ごす一日が、その場ですぐに「特別な思い出」になるとは限りません。友達とくだらない話をしながら歩いたことや、お弁当を食べたこと、「まだ歩くの?」と思ったこと。そんな何気ない出来事のほうが、案外ずっと覚えているのかもしれませんね。
■そしてまた尾瀬に……
今はまだ、子どもたちにとって尾瀬は「学校で行った場所」のひとつなのかもしれません。私自身、また尾瀬に来るようになったのは大学を卒業してからです。中学生の頃に尾瀬を歩いたことは覚えていたけれど、その頃はまさか自分が尾瀬でガイドになるなんて、考えたこともありませんでした。
今尾瀬を歩いている子どもたちも、これから先どんなふうに尾瀬と関わっていくのかはわかりません。もしかしたら、何年も尾瀬のことなんて思い出さないかもしれない。反対に、尾瀬に来たことをきっかけに、自然や山に興味を持つようになるかもしれない。何がきっかけになるかはわかりませんね。
いつかふと「そういえば、学校で尾瀬に行ったな」と思い出して、そしてまた尾瀬に戻ってきてくれたら嬉しいなと思います。そのためにも、これから先も「また訪れたい」と思える尾瀬であり続けること。そして、子どもたちが大人になったときにも、変わらない自然がそこにあること。
そんな未来を残していくことも、今を生きる大人たちの役目なのかもしれません。私が小さい頃から歩いた尾瀬が、今もこうして残っているように。いつかまた、子どもたちが尾瀬に帰ってきてくれたら嬉しいです。