●森林限界を超えて、岩峰の世界・西天狗岳へ
第二展望台を過ぎると、登山道の雰囲気は一変する。
樹林帯を抜けるにつれて視界が大きく開け、足元には大きな岩が増えてくる。振り返ればこれまで歩いてきた森が眼下に広がり、穏やかな山並みが続いている。
森林限界を超えると、西天狗岳へ続く山頂斜面が目前に現れる。ここからは南八ヶ岳らしい岩場の登りが始まり、本格的な高山登山の雰囲気を味わえる区間だ。
第二展望台を出発して約40分。息を切らしながら急登を登り切ると、西天狗岳(2,646m)へ到着する。山頂からは赤岳、阿弥陀岳(あみだだけ)、横岳(よこだけ)といった南八ヶ岳の名峰が一望できる。歩いてきた樹林帯とのギャップも大きく、標高差約800mを登り切った達成感を強く感じられる場所だった。
●八ヶ岳連峰を見渡す絶景の稜線歩き
西天狗岳から東天狗岳までは約10分の短い距離ながら、このコース最大のハイライトだ。いったん鞍部まで下り、岩混じりの登山道を登り返す。振り返ると西天狗岳の堂々とした姿が迫力満点で、その奥には北アルプスの峰々が連なっている。
そして辿り着いた東天狗岳山頂は、狭いながら360度の大展望が魅力だ。南八ヶ岳の主峰群はもちろん、蓼科山、北アルプス、中央アルプス、さらには南アルプスまで見渡せることもある。
山頂周辺には遮るものがなく、まさに天空の展望台。唐沢鉱泉から始まった森歩きが、最後にはこれほど壮大な景色へとつながることに驚かされる。八ヶ岳の魅力が凝縮されたような絶景を存分に楽しみたい。
●森へと戻る静かな下山道
東天狗岳で大展望を満喫したあとは、往路を戻って唐沢鉱泉へ向かう。
登りでは気にならなかった岩場も、下りでは足元への負担が大きい。岩場の多い西天狗岳周辺は浮石も多く、慎重な足運びが求められる区間である。
森林限界から再び樹林帯へ入ると、強い日差しから解放され、八ヶ岳らしい静かな森歩きが戻ってくる。
沢の音を聞きながら歩いていると、少しずつ登山口が近づいてくる。東天狗の頂から約2時間の長い下りを終えて唐沢鉱泉へ戻ったときには、心地よい疲れとともに。八ヶ岳の苔の森と大展望を存分に満喫した満足感に包まれていた。
●下山後のお楽しみ! 秘湯・唐沢鉱泉で疲れを癒やす
下山後は、そのまま唐沢鉱泉の日帰り入浴を楽しみたい。
唐沢鉱泉は明治時代から続く歴史ある温泉宿で、八ヶ岳の登山者たちに長年親しまれてきた。鉄分を含んだ独特の湯は身体の芯まで温まり、登山後の疲労をやさしく癒やしてくれる。日帰り入浴は10時から15時30分まで(受付15時まで)利用できるため、東天狗岳の日帰り登山後にも立ち寄りやすいのが魅力だ。
深い森に囲まれた静かな環境も魅力で、まさに“秘湯”が似合う雰囲気だ。東天狗岳の絶景、八ヶ岳らしい森歩き、そして下山後の温泉。登山と湯浴みを一度に楽しめるこのコースは、夏の八ヶ岳を満喫するのにぴったりの山旅である。