■天国と地獄! 没入感がハンパない里山ライド
「荒瀬原」の里のあたりは舗装路を颯爽と抜け「牟礼(むれ)駅」を目指して南下していきます。車道を通れば素早く移動できるのですが、少し疲労が回復したのでグラベルロードを探して脇道へ。
朽ちたガードレールやカーブミラーが点在する旧道はすっかり廃れています。下生えも茂っていて、軽トラやジムニーでも通過したくないような雰囲気。そうかと思えば、いきなり快適なグラベル区間が現れたりして、何を基準に判断して道を選んだらいいのかわからなくなっていきます。
「舟岳」の集落を訪れ、このまま「古間駅」に向かおうかと思っていたのですが、また魔が差しました。せっかく「北信五岳道路」の快適なロード区間を走っていたのに、脇をすり抜けていく気遣いのない車のプレッシャーにいたたまれなくなり、止せばいいのに気がつけば細い道へと逃げ込んでいました。僕もこの付近は公私ともに車では通っているのですが、車道の脇に存在する山道が気になっていたのです。
途中で寄り道しては、農作業の休憩中の方などに挨拶をすることもままあります。そのまま話を伺ったりもしたのですが、道の状況を尋ねると「かなり荒れているぞ」。そして、だいたい「ま、行けないことはないか……」と結ばれます。
遠くを見るように目を細め「昔はここが街道で、蚕を……」。最後は申し合わせたように「ブヨに気をつけてな」とか「ブヨいるぞ」でした。
「クマじゃないんかーい!!」と内心突っ込んでいましたが、山あいで仕事をしていると、クマのテリトリーなのでそれは当たり前で、その用心も当然。どちらかというと、このタイミングで急速に活発化している“ブヨ”を話題にするのが時期的にトレンドですね。これは僕の所属している山の組合のエリアでも同じです。
すっかり疲労困憊でしたが、午後になってからむしろ涼しくなってきたのがありがたい。もはや道の名残りがあるかどうかも微妙な森のなかを、どうにか往時を想像しつつルートを見極めて進みます。
動物避けのフェンスが登場しました。ちょうど進行方向にだけチェーンで封じられたゲートが設けられています。これでルートは合っていたことが確認できました。
北信濃の疏水「芋川用水」沿いのグラベルを快適に走行し「普光寺」へ。国道に出てしばらく走るとセブンイレブンがあります。補給のためにサイクルスタンドにバイクを掛けたら、外に置いてある瀟洒なテーブルセットがまるでオアシス。かなり消耗していたので、貪るように飲食しました。
国道18号線を横断し、そのまま「華表(とりい)橋」で鳥居川を渡ります。牟礼駅はイベントで人が集まって大盛況の模様でした。僕と自転車は泥だらけで酷いありさまです。だいぶ乾いていますが、これで電車に乗るのは忍びないので、スタート地点へ向かって自走することにしました。楽な国道沿いを走ればいいのに、脚も攣りかけなのに、わざわざアップダウンの多いルートを選択している自分が憎い。
ここまで来れば土地勘もかなりあります。電波もあるし、迎えに来てくれる友人たちの顔を思い浮かべ、50過ぎの身体に鞭をいれてもうひと漕ぎ。タフな一日となりました。
■エピローグ:予想どおりだった? 地形図からのイメージと実際のライディング
妙高高原駅〜豊野駅のルートプロファイル
走行距離:42.41km
累積上昇:1,034m
所要時間:約5時間50分(走行時間:3時間52分 一人で自撮りしているので、走行以外の時間がかなりあります。)
今回は“サイクルトレイン”をきっかけに発展させたルートでした。計画段階で地形図と睨めっこしながらルートを選んでいた際、前半はアップダウンがハードだけど絶景ライド、後半はしっとり穏やかなグラベル三昧というイメージでした。実走してみて感じたのは、思っていた以上に地形図上に表記されている道が悪いこと。地形図に記載されていても、実際に行ってみると道がなかったり(通行止めになっていたり)、逆にもっといい道ができていたりもします。
とくにそばに新たな道路ができた道は、グラベルバイクやMTBどころか歩きでも躊躇するような箇所も多くありました。
※ 今回のルートは、一般車両の通行が認められている、基本的に“車道”を走っています。
整備されていない登山道を歩いたり、薮漕ぎを日常的にしているような方でしたら通行は難しくはないですが、こうなってくると自転車が邪魔です(笑) 程よく里山グラベルが楽しめるルートは貴重で、宝探しみたいですね。
笛や鈴、カウンターアソルト(クマ撃退スプレー)に加えて、“熊おどし”を携行していたのですが、(あまりに怪しい藪、匂いがあったので)普段の渓流釣りのとき以上に頻繁に打ち、最後の方には残弾がなくなってしまいました。ほとんどはサルとタヌキのようでしたが……。鹿を見かけなかったのも意外でした。
夜な夜なインスタで世界のグラベルシーンをチェックしつつ羨ましく感じていますが、海外の人から見ればきっと日本も魅力のあるデスティネーションでしょう! 物価高等でなにかと生活が逼迫される昨今です。地図を眺め、なるべく近場でルートを探してみました。ちょっとした冒険気分を味わえるようなサイクリングルートを引いてみるのも楽しいひとときです。
知っているようで知らなかった新しい景色との出会い。おおいにときめくことができました。