■カラカラ浴場の入浴作法

 高い壁に囲まれた浴場内部に立つと、改めてその大きさを実感する。所々に残っている色鮮やかなモザイク装飾は、かつてこの浴場がいかに豪華で贅沢な空間だったかを物語っている。床には大理石や色鮮やかなモザイクが敷かれ、周囲の壁面や天井には美しい壁画や彫刻が一面に飾られていたという。

 装飾だけでなく、浴場としての設備も現在の健康ランドを彷彿とさせるような機能が完備されていた。浴場の利用の際には「循環入浴」を行うのが正しい作法として認知されていて、まずは浴場の両翼に備えられた運動場で汗を流し、隣にある更衣室で服を脱いで円形の温浴室へ向かう。温浴の後は熱浴室、さらにサウナでたっぷり汗をかいて「垢すり棒」で体の汚れを落とした後、冷浴室で熱を冷まし、最後は屋外プールでひと泳ぎ、という順序で入浴を行なっていた。富裕層はその後マッサージ室でリラックスして図書室で読書を楽しんだり、広間でおしゃべりに興じたり庭を散策したりして午後の時間を満喫した。こんな毎日が続くなら、さぞ人生も楽しかろうと想像しながら浴場内を進んでいく。

浴場内の豪華さを物語る大理石のモザイクの一部
建物は中央部に浴槽を備えた入浴室、その両翼に運動場がある構造
運動場からアーチを抜けると熱浴、温浴、冷浴室に続いている
施設内はローマの大浴場で最も特徴的な設備ハイポコースト(Hypocaust)と呼ばれる床下暖房のセントラルヒーティングが使われていた