秋から冬の夜は澄んだ空気と焚き火のぬくもりが心地よく、キャンプには最高の季節。しかし、そんな快適さの裏に潜む落とし穴がある。翌朝、テントの天井にびっしりついた水滴、しっとりと湿った寝袋、そして濡れた荷物。この「びちょびちょ地獄」の正体こそ、秋から冬にかけて多発する“結露”だ。
結露は単なる不快な現象にとどまらず、装備の劣化・カビ・体調不良を引き起こす厄介者。とくにキャンプ初心者ほど、そのリスクを軽視しがちだ。
■なぜ結露は秋冬キャンプで起こりやすいのか?
結露が発生する最大の理由は、夜から朝にかけての急激な冷え込みだ。外気温が下がると、テント内と外との温度差が大きくなり、空気中の水分が冷えて水滴になる。さらに、人間の呼吸から出る湿気、湯気、濡れた衣類などから水分が発生し続けることで、テント内の湿度は高くなる。
2枚の生地で構成されているダブルウォールのテントであっても、換気が不十分だったり、テント内に荷物を詰め込みすぎると湿気がこもりやすい。また、秋の晴れた日の朝はさわやかで乾燥しているように思えても実際には結露が起こりやすいのだ。
■結露を甘く見るとこうなる! リアル“びちょびちょキャンプ”
●天井からポタポタ…! 寝袋が冷えて震える朝
朝方、テントの天井からぽたぽたと水滴が落ちてきた。気づいたときには寝袋の表面がじっとり濡れており、触れた瞬間にひやっとした冷たさが伝わってきた。次第に体温が奪われていくような寒さに見舞われ、睡眠どころではなくなってしまった。
濡れた寝袋は乾きにくく、翌朝に日光で干しても完全には戻らない。そのときは連泊だったため、冷えが日に日に体に蓄積し、睡眠も浅くなり疲労も回復しづらくなるなど、キャンプを続けるほどコンディションが悪化していくのがわかった。
●壁際の荷物がびっしょり……! 着替えもカメラも大惨事
テントの側面はとくに冷えやすく、結露の水滴が溜まりやすい場所である。筆者は、荷物を側面に寄せて置いていたため、衣類が水滴や湿気を吸って翌日の着替えまでびちょびちょになってしまった。乾かす時間もなく、朝から不快さに襲われた。
また、ポーチに入れていたカメラにも水滴が付着し、大慌てした。幸い故障にはいたらなかったが、もしこれで写真まで撮れなくなっていたら、本当に大惨事の思い出しか残らないキャンプになっていたところだ。
●乾かさずに収納 → カビ臭&ギア劣化へ
撤収時に時間がなく、濡れたままテントを収納してしまった。自宅に戻ってケースからテントを取り出した瞬間、モワッとカビ臭が広がった。生地にはうっすらとシミが残り、触れるとわずかに湿り気がある。
放置すればカビが繁殖し、生地が劣化して買い替えが必要になる可能性も高い。結露が、ギアの寿命を大きく縮めることにもなると痛感した。
つまり、結露は小さな現象ではなく、キャンプ全体の快適性を奪う“静かな脅威”なのである。
■もう“びちょびちょ地獄”にしない! 簡単結露防止のコツ
結露対策は、実は難しいものではない。まず意識すべきは換気だ。テント内の換気口であるベンチレーターを少し開け、空気を循環させるだけでも結露を大幅に減らすことができる。また、荷物や寝袋を壁から10cm以上離して配置することで、冷えた側面に触れて湿気が水に変わるのを防げる。
さらに、100円ショップなどで購入できる結露吸水テープや、再利用できる除湿シートを活用することも有効だ。未使用の炭をテント内に置くだけでも湿度対策として頼もしい働きをしてくれる。これらを組み合わせることで、“びちょびちょ地獄”はかなり予防できる。
■結露を制する者が秋冬キャンプを制す
秋冬のキャンプで油断してはならない敵は、寒さよりもまず“湿気”だ。事前の準備と少しの意識だけで、結露による不快感やトラブルは大きく軽減できる。結露対策を「装備のひとつ」として加えることが、秋冬キャンプの成功のカギとなるだろう。