◼️想像と身体でを立ち上げる

 次は、主役となる木箱(=箱蒸し風呂本体)の製作だ。蒸し風呂好きの同志たちとともに図面を描き、試作を繰り返す。

実際に座って座高を確認し、調整作業を繰り返す
背面には刀の鞘作りに用いられる湾曲した木材を使用するというこだわりっぷり
多くの人がこの挑戦に力を貸してくれた

 香草を投入口から差し込む設計にし、セキショウやヨモギの蒸し投与も視野に入れる。そして、蒸気を送り込むためのダクト構造も同時に試作。まさに、試行錯誤の塊だ。

 やがて、2日間かけて完成した箱は、みんなで声をかけ合いながら人力で担ぎ上げ、テラスへと運んだ。

何かの神事かのような神輿感。山間にエッサホイサの声が響き渡る
テラスにダクト用の穴を開ける。ツリーテラスの構造ならではの箱蒸し風呂の仕組み
下のテスト窯からの湯気を送り込む。何事もやってみないと課題も見つからない

 試行錯誤が続いた数日間だったが、こうしてついに「リバービュー箱蒸し風呂 Ver.1.0」が誕生したのであった。

◼️湯気の中に、村の未来を見る

 そして、ついにテスト蒸し。まだ香草は入れていないが、木箱に満ちる湯気の感触と、こもる湿度の柔らかさに思わず、ニヤリと笑ってしまった。美しい清流を眼下に蒸されるこの特別感と自然との一体感。これは、間違いなく、古くて新しいジャパニーズサウナスタイルだった。

最高のリバービューの中、極上の蒸し風呂体験

 今回はプロトタイプということもあり、見えた課題も多い。湿気の抜け、ダクトの温度管理、香草の投入方法などなど。でも、試作したからこそわかったことばかりだ。

 あとはもう、本番用に作り直すだけ……。だが、例のごとく資金難とワンオペ運営の壁が立ちはだかる。正式な実装(Ver.2.0)は、しばし整備フェーズの後半に回すしかない。でも、それでいいのだ。こういう遊び心と無駄な遠回りこそ、このサウナ村に必要なマインドだと思っている。

 箱の中で静かに蒸されること。草の香りと水の恵みが、五感に染みわたっていくこと。そして、それを自分たちの手で作るという“村づくり”の営み。すべてが、この場所らしいサウナのあり方を教えてくれたのだった。

 次回、プレオープンまでの準備と奮闘の日々を振り返る。