日々の生活のさまざまなシーンでの利用が広がっているマイナンバーカードを登山にも活用できないか―― そんな新たな試みが、10月6日から北アルプスと八ヶ岳で始まった。「やまのあかしプロジェクト」と名付けられた、デジタル庁の実証実験が目指すものとは?
■安全マナーの学習や募金などをオンラインで一括実施
昨今、登山を楽しむ人が増えている一方で、登山道の荒廃、遭難事故の増加、気候変動への対応、山小屋の運営費の増大など、さまざまな課題が浮き彫りになっている。今回、デジタル庁が北アルプストレイルプログラムや八ヶ岳観光協会などと連携して実施する「やまのあかしプロジェクト」の目的は、マイナンバーカードを活用して、将来的に「登山者の安全と山の自然を守るためのエコシステム」を構築していく可能性を検証することにある。
具体的には、マイナンバーカードによる厳正な本人確認とデジタル資格証明の技術を用いて、登山前の準備から山での行動までをスマートに管理できる仕組みを試すとともに、募金への参加を呼び掛けて、山の維持管理のための新たな財源モデルを探ることを目論んでいる。


実証実験の実施期間は 2025年10月~2026年2月で、実施エリアは北アルプスと八ヶ岳の2つの山域となる。
参加者はまず、プロジェクトの専用サイトでマイナンバーカードやパスポート番号でID登録を行う必要がある。その後「山行の基本情報の入力」「安全登山のためのマナーチェック」「誓約書提出」を行い、自身のスマートフォンに「入山準備完了証」の発行を受ける。このとき、任意で募金にも参加でき、募金者には「募金完了証」が発行される。
山行中は、プロジェクトに協力する山小屋でデジタル証明書(入山準備完了証、募金完了証)を提示すると立ち寄り履歴が記録される。万が一の遭難時には、初動対応がスムーズになり、安全性が高まるというメリットもある。なお、山小屋で証明書を提示した登山者にはオリジナルのノベルティ(北アルプスと八ヶ岳の動植物をあしらったフライトタグ)が提供される。

■登山者からの募金は登山道整備などに利用
集まった募金はすべて「北アルプス登山道等維持連絡協議会(槍・穂高連峰、常念山脈、乗鞍エリアの長野県側)」「北アルプス北部山域連絡会(白馬含む長野県北部、新潟県側(後立山地域)の中部山岳国立公園内)」「八ヶ岳観光協会」に送金されて、登山道の補修や再整備などに利用されることになっている。
自分たちや次の世代がこれからも登山を楽しみ続けるためには、山の環境(自然やインフラ)を守るための持続的な仕組みが不可欠である。その試金石となるこのプロジェクトにぜひ参加してみてはどうだろうか。

【やまのあかしプロジェクト】
・2025年10月6日~2026年2月(予定)
・対象エリア/北アルプス、八ヶ岳
・プロジェクト協力山小屋/山小屋の一覧は専用サイトを参照。山小屋によって実施期間が異なるため、事前に必ず確認を!
・専用サイト https://yamanoakashi2025.com/