■ 清水貴康さんと作る「自分だけの和せいろ」

 イベントは募集と同時に定員になるほどの人気となった。

当日は清水さんのお話とともに、和やかに手作業が進んだ
貴重な山桜の皮を削って留め具用に厚みを整えていく
留め具を通していく。曲げ作業は、今回はあらかじめ清水さんにやってきてもらった
木槌で叩いて底をはめていく。コンコンと心地いい音が響いた

 せいろができたら、次は料理。調理講師として迎えたのは、堀田智恵さん。和せいろや竹製品の専門店「kitote」を営みながら、素材を活かした“蒸し料理”の魅力を伝える活動をしている。

kitote店主の堀田智恵さん。蒸し料理の基本をレクチャー
この日蒸しあげたのは、季節の野菜・鮭・そして特製中華おこわ

 もちろん、蒸気は円原川の伏流水(この地域の上水はすべて円原川の伏流水という贅沢さ)。水質はミネラル豊富な中硬水で、サウナで失われたミネラルを、身体の奥に再び送り返すような作用が生まれる。

地域の手味噌をベースにしたくるみ味噌を添えて。これでさらにミネラル補給

 サウナ後は、味覚が研ぎ澄まされる。味噌すら不要なほど、野菜や米、魚の持つ旨味がくっきりと舌に浮かび上がる。

 だからこそ、アブラギッシュな飯ではなく、蒸気だけで素材を活かす料理が理にかなっていた。「蒸す」ことは、THE WATERSのテーマ“水”をもっとも食に落とし込む方法だったのだ。

■ かまどに蒸気が立ちのぼる、その先へ

 和せいろづくりの時間も、蒸し料理を囲んだ時間も、みんなで過ごすことそのものが“整う”感覚を生んでいた。

 THE WATERSの物語は、ただ施設ができる話ではない。人が集い、サウナで蒸され、手を動かし、火を囲み、笑いながら食べる時間が積み重なってできていくものだ。

自ら作った和せいろを手に、それぞれの想いがめぐっていく

 火と水、木と土、羽釜(金属)から生まれる蒸気……。

 愛農かまどと和せいろは、まさに五行がめぐる台所。この“蒸し文化”が、THE WATERSのサ飯として根付いていく未来が、楽しみでならない。

 なお、このせいろも蒸し料理も、じつはまだ本番運用はできていない。愛農かまどを囲う予定の東屋が、資金不足のため工事中断中なのだ……。完成した暁には、このせいろで本格的な蒸籠蒸し料理をみんなで作りたい。

 その日を夢見て、いまはまた、地道にがんばっている。

 次回は、サウナ村づくりイベントのラストとなる「箱蒸し風呂づくり」の模様をお送りしていく。

 

<現在、9、10月分の予約を順次受付中>

「THE WATERS」は、2026年の本オープンを前に、日数を限定して一般予約を受付中。

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