「理想のサウナ村をつくる!」と宣言してから約1年。『THE WATERS』と名付けた我々の村には、やっと最低限のサウナ施設とかまどが完成し、サウナの後に飯を作れる場所ができた。
では、この「水がテーマのサウナ村」には、いったいどんな料理がふさわしいのか? 円原川の伏流水をどう活かせば、身体に、心に、染み込むサ飯になるのか?
サウナで蒸され、伏流水に浸かり、水を飲んで、仕上げは…… もちろん、ここも水を使ったせいろ蒸し料理にしようと思う。しかも、その蒸し道具すら、和の暮らしと岐阜の手しごと文化にこだわりたい。というわけで、村づくりイベント第5弾イベントは、「和せいろづくり」と「和せいろ料理の講座&試食会」に決定した。
■ “サ飯”にふさわしい道具を、自分たちの手で
五行(木・火・土・金・水)がめぐる『THE WATERS』では、“サウナ後のご飯”にも、ちゃんとストーリーがある。
“火”は、“土”でできた愛農かまど。“水”は円原川の伏流水を“羽釜”で沸かす。その蒸し上げる道具として選んだのが、“木”の香りと手しごとが息づく「和せいろ」だった。
手軽な量産品の中華せいろではなく、サウナ村のある岐阜の地の暮らしに息づいてきた和のせいろ。中華せいろに比べて、蓋が重く密閉度が高いため、多くの食材をじっくりと蒸すことができる。また、竹製ではなく檜を使用した木製なので、木の香りも楽しむこともできる。
このような、職人技と自然素材で作られる日本の曲げ物文化を、THE WATERSでも残していきたかった。そして今回は、そのせいろを“自分の手”で作るところから始めることにした。
■ じつは存続の危機に面している曲物文化
講師は、岐阜県各務原市に工房を構える曲物職人・清水貴康さん(曲物工房清水)。
彼は金融業界からものづくりの道へ転身し、岐阜県森林文化アカデミーで木工を学んだのち、曲げ物の世界へ身を投じたそう。「暮らしと自然がもっと近くていい」と語るそのものづくりは、単なる道具づくりを超えて、“文化と森の再接続”を体現している。
和せいろをはじめとした曲物は、現在、職人の減少や材料の不足(特にせいろの留め具で使う山桜の皮)により存続の危機にある。清水さんは「この文化を絶やしたくない。山桜も増やしていきたい」と、未来の自然と道具の両方を見据えて活動している。
その姿勢はまさに、自然と人の調和をテーマにするTHE WATERSの理念と響き合っていた。僕は以前から清水さんの存在を知っていて、「THE WATERSの和せいろはこの人にお願いしたい」と強く願っていた。そしてある日、一方的にアポを取り、工房へ押しかけ(いや、訪問し)、その思いを直接伝えた。
忙しいなかだったが、構想に共感してくださり、ワークショップ開催を快諾してくれた。しかも「料理もセットにした方が面白いですね」と、和せいろ料理家・堀田智恵さんまで紹介してくださったのだから、思わずありがたさで胸が蒸されそうになった。