■特別な「峠の釜めし」を携え、立入禁止区域へ
出発から1時間ほど歩き、峠の湯から10番目のトンネルを抜けると熊ノ平駅跡が目の前に広がります。

アプトの道はここ「熊ノ平」が折り返し地点で、一般のハイカーはこれより先に入ることはできません。ツアー参加者はなんと、ここで“峠の釜めし”で有名な「おぎのや」の釜めしを昼食として受け取ります。

しかもツアーで振る舞われるのは特別仕様。今回はラリーの開催日ということもあり、ここ碓氷峠を舞台にした人気カーバトル漫画『頭文字D』のキャラクター、真子と沙雪が描かれた掛け紙仕様。

「頭文字D」の新劇場版映画で作画監督を務めた横山愛氏が描き下ろしたもので、オンラインショップ限定とのこと。
普段のツアーでは、はやせ淳氏による人気旅漫画の『新・駅弁ひとり旅』とコラボした廃線ツアー限定の掛け紙バージョンが配られるそうなので、釜めしファンとしてはぜひコンプリートしたいところです。
広場のような旧熊ノ平駅構内にある変電所は、1937(昭和12)年に設置された施設。めがね橋などの橋梁や隧道(トンネル)とともに、旧碓氷峠鉄道施設として国の重要文化財に指定されている、歴史的価値のある鉄道遺構です。
■ラリーカーの爆音を聞きながら廃道のさらに奥へ
釜めしをバックパックにしまい、ツアー参加者のみ入ることのできる立入禁止区域を進みます、アプトの道の線路はすでに撤去されていましたが、ここからは線路はもちろん枕木も残る、まさに“廃線”。

枕木の間隔に歩幅を合わせ、さらに軽井沢方面に向かって歩いていると、映画『スタンド・バイ・ミー』の世界に迷い込んだ気分になります。
旧18号線のS字のコーナーを見下ろせる線路に腰を下ろし、釜めしをゆっくり味わっていると、旧国道を封鎖して行われるラリーのタイムアタックが始まりました。

風が木々を揺らす音や小鳥のさえずりに混じって、甲高いエンジン音がかすかに聞こえてきた次の瞬間、コーナーからラリーカーが飛び出し、猛スピードで下界へと消えていき、再び静寂が訪れます。

そよ風とラリーカーの爆音を交互に聞くという、かなり非日常な体験は「碓氷峠 廃線ウォーク」ならでは。

ツアーの最後には「峠の湯」で、心地よく疲れた身体を休めます。「美肌の湯」とも呼ばれる弱アルカリ性の泉質で、ピリつくような刺激がないため、ゆっくりとお湯を満喫できました。

体力に自信のない筆者でも十分楽しめた「碓氷峠 廃線ウォーク」。日本の発展を支えた鉄道の歴史はもちろん、この土地や人の魅力、そして新時代のアクティビティであるラリー・ツーリズムなど、碓氷峠の過去と未来の姿を心に刻む体験ができました。
碓氷峠 廃線ウォーク
https://haisen-walk.com/
あんとりっぷ(安中市観光機構)
https://www.antrip.jp/
●【MAP】碓氷峠(群馬県安中市)