◼️落ち葉のように見える虫たちの擬態
落ち葉そっくりに擬態している虫は、ムラサキシャチホコ以外にもいる。もう2種ほど、面白い擬態を持つものを紹介しよう。
まず、クロコノマチョウ。「チョウ目タテハチョウ科」に属し、成虫は大きな枯れ葉そっくりの姿をしているチョウの一種だ。クロコノマチョウは漢字で「黒木間蝶」と書く。日陰の多い林(=木の間)に生息していることが名前の由来だ。そのような薄暗くて枯れ葉がたくさん落ちているところに紛れられると、見つけるのは至難の業だ。

ただしクロコノマチョウは昼行性であるため、昼でも飛んだり動いたりする。夜行性のガと比較すればまだ見つけやすい存在かもしれない。

ちなみにクロコノマチョウはもともと南方系のチョウで暖かい地域に生息する種だ。しかし、北へと徐々に分布を広げているため、見る機会は少なくない。
次は、アケビコノハ。「チョウ目ヤガ科」に属する、ガの一種だ。「幼虫がアケビ類の葉を食べて育つこと」「成虫が木の葉そっくりの姿であること」が名前の由来だ。その姿から、アケビコノハが地面や樹木の枝などに止まっていると、見つけるのは難しい。


このように、アケビコノハは普段枯れ葉そっくりの地味な姿をしているが、”別の顔”を持つというのも面白い。実ははねをひらくと黄色の鮮やかな姿を持っているのだ。

チョウ目の昆虫たちの中には、「一見地味な姿だが、はねを開くと鮮やかな姿を持つもの」も少なくない。はねを開く前と後で全く異なる印象になることも多いのだ。これは捕食者から身を守るためのものであると考えられている(ヤガ科に属する「シタバガ」たちは、はねを開くと印象が変わるガとして代表的だ)。
このような多面的な姿を持つのも、チョウ目の虫たちの魅力のひとつだろう。
驚くような擬態をしている虫たちは多い。何の変哲もない落ち葉や枯れ葉も、それはじつは虫であるかもしれないので、それらに気がついた時にはぜひ近づいて観察してみてほしい。