山と海に囲まれて、一歩アウトドアに踏み出せば動物との出合いも多い日本。鳥や魚、イノシシにサル、そしてシカやクマも身近な里山で見られます。そのほとんどが予期せぬ体験で、貴重な思い出となっている人も多いのではないでしょうか?

 そんな体験を通して密かに芽生えたアナタの“野生動物への興味”を、さらに刺激しちゃうかもしれない!?  生き物のちょっと変わった生態や、不思議に思える行動などにグッと迫ってみよう、という本シリーズ。

 今回は「長崎ペンギン水族館」を訪問し、集団生活の実態を知るうえで欠かせない“ケンカ”についてレポートします。教えていただいたのは、飼育展示課 ペンギン担当・山口あゆ美さんです。

■小さいケープペンギンが怒って追いかけまわした相手とは?

 かわいくてのんびりした印象のペンギンですが、ケンカをすることはあるのでしょうか。

 「種類でも差がありますし、野生と飼育下ではまた違うのですが、長崎ペンギン水族館のペンギンはおだやかな子が多いですね。ただし、やはりケンカをすることがあります」(山口さん)。

 山口さんは、怒ったペンギンが、ほかのペンギンを追いかけまわす姿を見たこともあるそうです。

 「予備飼育室という体調の悪い子を飼育する部屋があるのですが、そこでは日ごろは別々の部屋で飼育される異なる種類のペンギンも一緒に過ごします。あるとき、体の小さいケープペンギンが自分より一回り大きなフンボルトペンギンを追いかけまわし始めたんです。急いで引き離しました」(山口さん)。

 小さい体のケープペンギンが懸命に大きなフンボルトペンギンを追いかける姿は、本人(鳥)たちは真剣だとしても、ちょっとかわいく感じてしまいますね。

容疑者? ケープペンギン

【DATA】
ケープペンギン
分類 ペンギン目ペンギン科ケープペンギン属
分布 アフリカ南部・ケープ地方

被害者?? フンボルトペンギン

【DATA】
フンボルトペンギン
分類 ペンギン目ペンギン科ケープペンギン属
分布 チリ、ペルー

■叩かれるとあざになることもある固い武器

 ところでペンギンは怒ったとき、追いかけまわす以外にどのような行動をするのでしょうか。

 「フリッパーと呼ばれる翼で叩くんです。フリッパーのなかは骨と筋肉がつまっていて、とても固いんです。飼育員も怒らせると叩かれることがあります。餌が遅いとか、身体検査が嫌だとか、そんな理由だと思うのですが、叩かれるとすごく痛くてあざになりますよ」(山口さん)。

 一般的に鳥類には空を飛ぶための翼がありますが、空を飛ばなくなったペンギンの翼はひれ状のフリッパーになりました。水の中で泳ぐのに適したものですが、怒った相手を叩く時にも使われるそうです。

固いフリッパー