これまでのミルフォードトラックの体験記では、2日目のブナの原生林を抜け、3日目は行程中いちばんキツイと言われる標高差700mの峠越えをレポートしてきました。3日目のラストは、ニュージーランド最大の滝「サザーランドフォールズ」の迫力に圧倒され、全身で達成感を味わう一日となりました。

第1回|世界遺産の“世界一美しい散歩道”「ミルフォードトラック」体験記・全体概要&1日目──夢のトレイルへ出発!【5/28 山小屋ネット予約開始】

第2回|世界遺産の“世界一美しい散歩道”「ミルフォードトラック」体験記・2日目&3日目──原生林の森を抜け絶景峠へ!NZ最大の滝に圧倒

 さて、体に疲労が少しずつ溜まってきたツアー4日目は、ついに合計54kmのトレイルの終着点「サンドフライポイント」を目指します。高低差はほぼない道のりを約21km、7時間かけて歩きます。

ミルフォードトラックツアー全体の標高差グラフ

■ツアー4日目:8時に雨の中を出発

 この日の天気予報は終日雨。年間200日雨が降るというミルフォードトラックで、ここまで毎日晴れていたのがラッキーなのでしょう。4日目は朝からザーザー降りです。レインウエアを上下着てフードを被り、バックパックにレインカバーを装着し、クインティンロッジを8時過ぎに出発しました。

朝からしっかりとした雨。全員がレインウエアを装着
シダ植物や苔に覆われた木々を抜けていきます

 この日のルートは立派なシダや苔に覆われた木々の森を抜けて歩くルートが多かったです。熱帯雨林のような森は雨が似合いました。葉っぱが濡れ緑が濃くなり、いきいきしているように見えます。トレイルは40~50cm幅のはっきりとした道があり「いかにも散歩道!」。晴れた日にも歩いてみたいものですが、きっとこれが本来の姿なのでしょう。

■10時 早めのランチ休憩

 最初の休憩はスタートして約3.4kmのところにあるダンプリン小屋で。こちらで早めのランチ休憩を取ります。サンドイッチを朝食会場で作るのも3度目ともなると大分慣れ、2個のうち1つには鶏肉、もう1つにはツナをメインにして、オリーブやハム、野菜など好きな具を挟みかなり重たくて厚みのあるものに仕上がっていたと思います。

朝食会場で作ったサンドイッチをこの日もいただきます

 毎回ランチ休憩の小屋ではガイドさんが温かい飲み物を用意してくれ、体が温まりホッとする時間になりました。

 ランチのあとは、深いエメラルドグリーンで透明なアーサー川沿いを2時間ほど歩きます。晴れていれば驚くほどの透明度で巨大ニジマスが泳ぐ姿も見られるとのことです。

アーサー川。晴れていたら透明でエメラルドが美しい姿が見られるそう

■11時 「マッカイ滝」と猫の手の癒し

 途中、雨に濡れて幻想的な色合いをまとった「マッカイ滝」が姿を現します。幾筋にも分かれて段差を描く滝壺から、水流がくねるように流れ落ちる様子はまるで絵画のよう。政府観光局のポスターに選ばれるほどの美しさです。

 そのマッカイ滝のすぐ横には、「ベルロック」と呼ばれる大きな岩があります。ベルロックは、滝の浸食で中身が鐘(ベル)の形に空洞になり、転がって現在の位置にある大岩。中を覗くことができることから立ち寄りスポットの1つになっています。

政府観光局のポスターにもなる「マッカイ滝」
中に鐘(ベル)のような空洞があるベルロック

 雨のトレイルを歩いている中で、ふと道端に先端がぐるぐると巻かれたシダ植物の赤ちゃんを発見。何気なくやさしく握ってみるとモフモフして猫の手のような感触であることに気付きました。もうこれが可愛くて癒され、見つける度に触れ、降りやまない雨に少し落ちていた気持ちが何度も救われました。

この日の一番の癒しになったシダの赤ちゃん

 ミルフォードトラックには、いくつも橋があり、中には人数制限が決まっているものが多くありました。橋を渡る手前に看板があるので必ず確認しましょう。「人数制限1人」と書かれている場合は少し緊張します。

人数制限のある橋。この看板には「1人まで」と書かれています
歩くと上下にゆらゆら揺れてちょっと怖い橋

■13時 岩盤をくり抜いた空中回廊へ

 マッカイ滝を過ぎると、左の岩盤がえぐられたような道が現れます。この道は、囚人や鉄鉱夫たちがダイナマイトを使って削り出した道です。1896年から2年間かけてダイナマイトを用いた大規模爆破が進み、1898年5月に完成。着工から計算すると完成まで実に8年を要した歴史的難工事だったようです。

 この道の右手には眼下100mほどに川が、左手には岩の上に生えた苔やシダ植物が続きます。ガイドさんからは出来るだけ壁沿いを歩くようにとアドバイスがありました。

ダイナマイトで削って開通させたという道

 今回のツアーでは歩く行程の4日間のうち、最終日だけが雨でした。ガイドさんからは「今日が雨でほんとにラッキーだよ」と言われました。4日目の行程では雨が降ったことで無数の滝が出現し、岩肌を流れる美しい姿をいくつものポイントで見ることができました。 

雨によって無数の滝が出現します

■14時半 「ジャイアンツゲート橋」とサンドフライ地獄

 この日の終盤に渡る「ジャイアンツゲート橋」もフォトスポットの1つ。約30mもある橋からは、左手に滝、右手にアーサー川を同時に望めることができる吊り橋です。晴れている日は橋を渡り切った河原で休憩を取ることが多いそうですが、雨だったのでそのまま歩みを進めました。

 残り5km地点のトイレ休憩ポイントに着くと、ここがまさに“サンドフライ地獄”! メッシュの防虫ネットを持っていたものの、水を飲む度に外しその隙にたかられることが分かったので、ネットは使わずに第1回の記事で紹介した虫よけスプレーを常にかけることでなんとかサンドフライの猛攻から逃れました。

30mある橋から「ジャイアンツゲート滝」を眺めます
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