3月に突入し、スキー&スノーボードシーズンも終盤。雪国北海道でも市街地はプラス気温になる日も増え、春の訪れを身近に感じられるようになった。しかし、スキーヤー、スノーボーダーのシーズンはまだまだ終わらない。

 ここ数シーズン、すっかりハイクアップの虜になっている筆者は、まだ探せばパウダースノーが残っていると聞きつけ、今回プロガイド主催のバックカントリーツアーに参加することに。プロならではの視点、判断、経験を積み重ねたからこそわかる斜面選択、リスク管理などツアーに参加して、改めて感じたプロガイドの存在の大きさをレポートする。

■滑りはじめて敢えて下る理由とは!?  経験に裏付けされたベストな選択

 2月のある日、道内のあるスキー場に集合したのは筆者を含め5人。参加者の技術レベルは、スキー場のコースであれば問題なく滑れる程度。特出して上手いわけでもないが、いずれも暇さえあれば足繫くスキー場や山に通う、雪をこよなく愛するスキーヤーたちだ。

 前日まで気温の高い日が続き、山の中も雪の状態が心配された。しかし、そこは経験豊富なプロガイド、時期・時間・気温・風向きといったあらゆる自然条件を考慮し、この日最適なエリアをセレクト。出発前に我々が装備を整えている間も、偶然居合わせたガイド仲間と情報を交換し、準備に余念がない。

 準備を終え、滑るポイントに移動するための起点に到着。この日山麓ではそれほど風は強くなかったのだが、ここは隣の人の声が聞こえにくいほど風が強い。そんな中、他のグループがそこからさらに上部の方向に登っていくのを横目に、筆者たちのグループは反対方向、気づけば下の方へ降りていく。

少し位置を変えるだけで、風とは無縁の静寂が支配する山となった

 「今日はあまりよい条件ではないのかな」と筆者は感じていたのだが、さらに下の方へ進んで行くと、上部であれほど強く吹いていた風がピタリとおさまり、無風・無音の世界が広がっている。高度・場所が変わると、これほど違うものかと驚いた。

 「距離は短いですが、雪質チェックを兼ねてさっそく一本滑りましょう」というガイドの合図で滑走準備を整え、滑ってみると、雪がいい!  ハイシーズンのようなフワフワパウダーとまではいかないが、雪が軽く滑りやすい。この時期のこの条件、大満足だ。

 いい意味で予想を裏切られ、立て続けにもう一本滑ることに。意気揚々と最初の一本のイメージのままスタートしたが、今度は雪面の下地が硬く、上に積もった雪が重いテクニカルな斜面に苦戦。同じような場所、斜度でも日当たり、風の方向によって、雪質は全然違うのだ。

■混雑を避け、斜面を独占!  見事な判断力でノートラックを堪能

筆者たちのはるか上部を進み、より高みを目指すグループ。混雑を回避するのもテクニックの一つだ

 二本滑り終わったところで登り返しだ。ふと、見上げると遠く先の広い斜面をトラバースする二人の姿が。「さっき上に登って行ったグループですね。みんな長い距離を滑りたいからあっちに行くんですが、滑る斜面の争奪戦が激しいんですよね」とガイド。大半が向かうであろうメジャーなルートを避け、あえて短い距離を滑る方を選択していたのだ。結果、他のグループとかぶることなく、条件の良いエリアを独り占めできた。

 幾度となく同じ場所を訪れており、他のグループの行動パターンを把握している経験豊富なプロガイドならではの判断だった。

ここにしかない景色、雪質を求めて多くのスキーヤー、スノーボーダーが訪れる

 登り返しは急登となったが、全員の状態を確認しながらゆっくりとしたペースで進む。ケガにつながるため焦りは禁物。目的のポイントまで登り返し、新たなノートラックを一本滑り、昼食タイムとなった。

 手短に昼食を済ませ移動の準備を進めていると、上から一人のスノーボーダーが滑り込んできた。どうやら我々が付けたラインを追ってきたようだ。「こうやって後追いされるとよい気はしませんよね。一緒に行動してしまうと、こちらにも責任が出てくる場合もあるので」とガイドが言う通り、後追いしてきたスキーヤーやスノーボーダーが万が一ビーコンなどバックカントリーを楽しむために必要な用具を所持しておらず、雪崩などに巻き込まれた場合、先を行ったグループが救助などの面倒を見なければならない場合もある。

 知識が乏しく、正しい判断ができない場合、安易に山の奥に進むことはしてはならないのだ。