■危険箇所で転倒!  あわや滑落!?

最初に現れた急斜面。身近な低山でもこのぐらいの傾斜は現れる。設置されたロープを利用して慎重に登りたい
左側が崩落して細くなってしまった道。はるか下に沢が見える。先行者は慎重に渡ったが……

 今回の登山では2度転倒してしまった。最初は序盤で体力が消耗した後に現れた急斜面で、ロープが設置してある土の路面で滑って前のめりに倒れてしまった。すでに足に力が入らず、バランスをとるのも難しくなっていたので、単に滑っただけではないように感じた。

 次は幅50cmに満たない道を通過中に、泥濘(ぬかるみ)で足を滑らせ転倒。左側は崩落してできた高さ約10mの崖となっていたが、幸いにも山側に倒れたため大事には至らなかった。一歩間違えれば滑落していたと思うとゾッとした。

●転倒・滑落しかけた原因を3つの観点で考察

 この危険な事例に関して、原因と改善策を考えた。

「体力の消耗」
初めの転倒は、足に力が入らずバランスが取れない状態で発生した。体力の消耗で急斜面での歩行が難しくなり、転倒に繋がったと考えられる。急斜面を登る前に休憩を取り、疲労を軽減することが重要だ。

「歩行技術不足」
傾斜が強い土や泥濘の路面は滑りやすく、転倒リスクが高い。ロープや鎖が設置してある場合でも、バランスに注意して足で歩くことを基本に心がける。体が不安定なときは無理せずに一度止まり、安全な姿勢を確保してから進むよう心掛ける。

「集中力と判断力の低下」
足に力が入らない状態で登山を続けた結果、疲れて集中力が低下した。特に急斜面や、泥濘がある狭い道では慎重さが求められ、体力と集中力の低下が転倒の原因となる。無理せず休憩して、体力を回復させたい。

 また、こうした道では安全確認が重要であり、崖を滑落しかけた転倒の場面では、無理に渡ろうとせず引き返す判断も重要だった。

■山頂で凍える寒さを経験

気温が低いから汗をかかないと判断し、綿100%の肌着で登山した結果は?

 登山当日の外気温は2℃で、時折木々が軽くゆれるほどの風が吹いた。登山に使う肌着の存在は知っていたが、「寒いからそれほど汗をかかないだろう」と甘く見て、普段のTシャツを着用していた。しかし、登りで予想以上に汗をかき、山頂に着いた途端、汗で体が冷え、寒さに震える結果に。昼食を早く切り上げ、景色を楽しむ余裕もなく、下山することになってしまった。

●汗冷えした原因はベースレイヤー(肌着)にあった

 筆者はベースレイヤー(肌に直接触れる服)に綿100%のTシャツを着て登山をしたため、汗冷えを起こしてしまった。登山では「レイヤリング(重ね着)」が基本だ。特にベースレイヤーの選択は重要で、今回選択した綿は汗を吸収するが、乾きにくく、体温を奪ってしまった。

 登山では速乾性にすぐれた化学繊維(ポリエステルなど)や、メリノウール(メリノ種の羊から取れる天然の羊毛)で作られたベースレイヤーを着用し、防寒対策をしっかり行うべきだと痛感した。また、年齢を重ねると免疫力の低下も考慮する必要がある。汗冷えによって体温が下がると、風邪をひきやすくなり、回復にも時間がかかるので注意が必要だ。