■第二の番人「建築基準法」
サウナ小屋、または屋根付きのテントサウナ用ステージを建てる、となると、面積などに応じて建築申請が必要になってくる。ただ、僕らの場所は超田舎ってことで「都市計画区域外」に指定されており、簡単なものであれば建築確認申請が不要だった。よし! じゃあ、いろいろ小屋とか建てられるぞ! と思ったが、そうは問屋が卸さない。
「建築申請がいらない小屋」の基準は自治体によって異なっているらしく、県の建築事務所に出向いて確認した。すると「倉庫程度なら大丈夫」というので、「倉庫の基準って何?」と聞くと、「扉を開けて、手を伸ばして中の荷物が取れる程度の広さのもの」というなんともフワッとた回答が返ってきた。僕がゴムゴムの実の能力者ならどこまでも腕を伸ばして“でっかい小屋(倉庫)”が作れるが、残念ながら普通の人間なので知れたサイズのものしか作れない。さらには、「天井と壁があったらダメ」というお達しもあり、再び僕は途方に暮れることになったのである。
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そこで「天井も壁も基礎もない、ツリーテラスなら問題ないですか?」と問うと、それは大丈夫! となり、天井も壁もない柱だけのパーゴラ(よく公園とかにある藤棚みたいなやつ)も問題ないという確認を取った。そこから再び、何度も現地の実測と計画変更図面を作成し、それを持って建築事務所へ確認に通って確認を続けた。何事もすんなりとはいかないのである……。
こうして、川沿いのツリーテラスで、テントサウナにて運営する(テントサウナは移動可能なので小屋扱いではない)という形に落ち着き、なんとか第二関門を突破したのである。(でも、いずれは小屋サウナを建てたいから、この問題とは向き合い続けていくだろう)
■第三の番人「公衆浴場法」
三つの関門のうち、もっともハードで現時点では突破不可能では? といわれるのが「公衆浴場法」だ。
基本的に、サウナ営業には公衆浴場法の許可が必要とされているが、現行の公衆浴場法は従来の“温浴施設”にのみ適合したものなので、近年台頭してきたアウトドアサウナ用に適用しようとすると無理が生じるものばかり。
冒頭で「四角い円を作りなさい、と言われるのに等しい無理ゲー」と紹介したが、例えばテントサウナで営業しようとすると、それこそ温浴施設級の設備を整備する必要があり、莫大なお金がかかるうえ、そもそもお金があっても立地的に無理な場合が大半。アウトドアやテントサウナの利点も活かせずで、まったく現実的じゃないことが多いのだ。
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僕に限らず、全国のアウトドアサウナ事業者が同じ問題で苦しんでおり、事業者だけでなく、保健所の人も判断基準がなくて苦しんでいる。結果、多くのテントサウナ事業者は、仕方なくお客さんに“テントサウナをレンタルして自己責任でやってもらう”などの工夫をしているところがほとんどだ。
客の自己責任なら公衆浴場法は関係なくなるが、それだと火傷や一酸化炭素中毒の危険が伴うテントサウナを素人任せにするということになり、非常に危険で、クオリティも担保できない。本来はプロがしっかり設営やリスク管理をするべきだが、公衆浴場法の許可が取りたくても取れないので、それができない……。法整備が追いついていないことによって、命を守るべき法が、逆に命の危険を生んでいるという矛盾を抱えてしまっているのだ。
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それでも年々法内容も協議され始めており、「水着着用であれば男女混浴でも可」など、テントサウナに言及した追加項目も出始めている。アウトドアサウナで地方創生を! と頑張る山梨県や鳥取県などでは、規制緩和も積極的に行われていたりする。排水に関しても、環境に影響を与えないレベルであれば問題ないとするところもある(羨ましい!)。
そんな中、僕も保健所に通い続けて協議を繰り返し、多くの課題をクリアして、今では公衆浴場法突破まであと一歩のところまで漕ぎ着けた。しかし、僕らの地域は下水も通っていないため、予想通り、シャワーの排水処理に莫大な費用がかかることがわかり、あと一歩のところで足踏みをしている状態だ。
来年の本オープン時までに必死で費用を貯めて整備するしかないのか…… 無理ゲー突破まであと少し…… なんだけど、このラスボスが強すぎてもう……。
そんなこんなで、乗り越えるべき壁はまだまだ多い。生半可な気持ちで「テントサウナ営業しようかな〜」となっていた人は、かなり引いたことだろう(笑)。
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次回は、そんな人たちをさらに引かせる、資金調達のお話をしたいと思う。アウトドアサウナ事業は、苦難を乗り越えるための覚悟と愛、そしてお金がなければできない事業なのである。
プレオープン予定の春が近づいてるけど、まだサウナもできない状態……。でも、なんとか2月からハッスルして村の整備を進めたい! 作業を手伝ってくれるボランティアさんも募集してるので、興味がある人はInstagramで日程をチェック。