筆者は池波正太郎原作の時代小説で、中村吉右衛門主演のテレビドラマシリーズ『鬼平犯科帳』にはまったひとりだ。昨今は、松本幸四郎主演の最新作『鬼平犯科帳  老盗の夢』が大変話題である。それがきっかけで中村吉右衛門主演の『鬼平犯科帳』が思い出され、聖地巡りがしたくなった。

 そこで、中村吉右衛門主演の『鬼平犯科帳』のエンディングで使われた京都府南丹市(なんたんし)の摩気橋(まけばし)を訪問してきたので、その様子をお届けしよう。

■摩気橋

ちょんまげの人がひょっこり出てきそうな摩気橋横の河原
摩気橋
摩気橋北側

 摩気橋は、摩氣(まけ)神社前を流れる園部(そのべ)川に架かる木製の橋である。この橋と摩氣神社周辺は、時代劇のロケ地として頻繁に使用されることから、「時代劇の聖地」とも呼ばれる場所の一つだ。

 中村吉右衛門主演の『鬼平犯科帳』のエンディングで使われた摩気橋の風景は、胎金寺山(たいこんじやま)から流れ出る園部川の支流が交わる水路から撮影されたものである。しかし、摩気橋は老朽化が進んでおり、現在は半分が立ち入り禁止となっている。

摩気橋の下から園部川を眺める
老朽化した摩気橋
摩気橋

 橋の下の河原に降り立つと、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような錯覚に陥った。ちょんまげの人がひょっこり現れそうな雰囲気である。中村吉右衛門主演の『鬼平犯科帳』のエンディングで見た景色が目の前に広がって感激した。

■摩氣神社

摩氣神社
既視感がある摩氣神社境内。おそらく時代劇で見たのだろう
摩氣神社本殿裏

 次に訪れたのは摩氣神社。この神社は1200年以上の歴史を持ち、摩気橋と同様に時代劇のロケ地としてもよく使われる。摩氣神社裏には胎金寺山がそびえており、かつてはこの山そのものが神体(神奈備)として崇められていたという説もある。

手彫りとは思えないほど精密な摩氣神社の狛犬
摩氣神社裏から胎金寺山を望む
摩氣神社神門

 本殿の建築様式は、本殿の左右にそれぞれ社が連なる特徴的なもの。檜皮葺(ひわだぶき)の本殿は、藁葺屋根で覆われ保護されており、趣のある姿をしている。特筆すべきは、江戸時代の石工の名人による狛犬。手彫りとは思えないほど精密で、驚かされる。社の裏には田んぼが広がり、その奥に胎金寺山を望むことができる景色はまるで絵画のようであった。