■新石器時代の人類の痕跡も残るサウススロープからスタート

 アテネのアクロポリスには入り口が2つあり、多くの観光客は最短ルートでパルテノン神殿などが集まるアクロポリスへ直行するメインエントランスから入場する。しかし、実際に歩いてみると、アクロポリスの崖下にあるスロープから徐々に登っていく南側のサイドエントランスから入るのが正解のように感じた。入場チケットには「Acropolis & Slopes」と表示されているが、最短で丘の上のアクロポリスへ行ってしまうと、南側のスロープを見逃すことになり、これは非常にもったいないと思う。また、朝から行列をしているメインエントランスに比べて、南側のスロープ入り口は比較的空いており、入場がとてもスムーズだったこともお薦めの理由の一つだ。

 サイドエントランスから入場すると、広大な敷地内のコースに沿った遊歩道が現れる。アクロポリスへと続く南側の斜面は、古の時代より芸術、文化、宗教活動のための聖域、劇場、その他の建造物を建てるために使用されていた。遊歩道に従って歩いていくと、紀元前4世紀に造られたディオニソスの劇場や古代ギリシャの病院として使われていた治癒の神アスクレピオスの神殿、現在もコンサートなどに利用されている古代のヘロディス・アッティコス音楽堂など、古代ギリシャの人々の文化や暮らしぶりがうかがえる興味深い遺跡の数々が目の前に現れてくる。

地下鉄アクロポリ駅の近くにあるサイドエントランス

入場すると各遺跡を巡るルートの標識と遊歩道がある。こちらからのルートだとアクロポリスの丘が最終目的地になる

紀元前330年頃に完成したディオニソス劇場。近くにはディオニソスの神殿などもあった

紀元前2世紀の遺跡エウメネスのストア。ディオニソス劇場とヘロディス・アッティコス音楽堂を結ぶ屋根付きの回廊で、観客が公演の休憩時間に散歩を楽しめるように作られたという