普段何気なく歩いている登山道は、手入れをしないとどんどん傷んでいってしまうもの。人気の山であれば特に顕著に現れ、歩きにくい危険なトレイルになってしまう可能性がある。そこで、NPO法人信越トレイルクラブ(長野県飯山市)は、未来へ続くロングトレイルを運営するためのイベント『Trail Maintenance Meeting 2024』を10月25日(金)に開催した。信越トレイルを歩き、実際にトレイルメンテナンスを行うワークショップに筆者が参加してきたので、その模様をレポートしたい。
■このイベントの目的
近年「ロングトレイル」の登山道整備についての関心が高まる一方で、地域と共生してトレイルを運営していくための “ソフト面” に関する課題や対応策等に触れられる機会が限られているのではないかという考えのもと、信越トレイルクラブは誰でも参加可能な『Trail Maintenance Meeting 2024』を開催。
イベント当日は、アメリカ東海岸3,500kmにおよぶ「アパラチアントレイル(AT)」のメンテナンスを 90年以上にわたり担っている「ジョージア アパラチアン トレイル クラブ(GATC)」のメンバーを招き、ともに信越トレイルを歩き、実践的な手法や考え方に触れるワークショップを行った。メンテナンスの手法といった “ハード面” のみならず、トレイルを末永く運営していくための具体的な “ソフト面” を学ぶためである。
■光ヶ原高原キャンプ場に集合
当日の朝、信越トレイルの関田峠にアクセスしやすい上越市の光ヶ原高原キャンプ場にて受付が行われた。参加者は参加費4,000円を支払い、テープにニックネームをローマ字で書き、ヘルメットなど分かりやすい場所に貼る。
合計30名の参加者を3チームに分け、それぞれの整備地でトレイルメンテナンスを行う形になる。信越トレイルクラブの方、GATCのメンバーも一緒にチームに分かれ、まずは自己紹介からスタート。一緒のチームになった方は、登山用品専門店のショップスタッフや他のトレイルクラブに所属している方などが多く、皆さん山好きの方ばかりだった。
■初めての信越トレイルを歩く
それぞれにクワやスコップなどメンテナンスに必要な道具を持ち、信越トレイルへ向けて出発。まずはGATCの方から道具の持ち方についてポイント説明があった。
内容は、周囲の人や自分を傷つけないように尖っている部分を下に向けて持つ、一定の距離を保つ、すれ違う時は声をかけるなど。一見分かっているようで、重たくなってくると肩に担いだり、持ち方を変えたくなってくるもの。基本的だが、何よりも安全に作業を行うことの大切さをきちんと教えてくれた。
筆者は初めて信越トレイルを歩いたが、自然が綺麗に残された素敵な登山道だと感じた。ブナがトンネルのようになっていて、森との距離が近く山と一体になっているようで嬉しかった。
トレイルの途中で雪の重みで曲がったブナの木に遭遇した。普通に歩けば体にぶつかる高さの木と、道に横たわるように生える木があった。そこで、信越トレイルクラブの事務局長 大西さんよりGATCの方へ問いかけた。
「アメリカではこういった木を切りますか? 信越トレイルではくぐったり、またがることのできる木は、伐るのは少し可哀想という気持ちもあってそのまま残している場合がある。」という質問に対し、GATCの方からは「アメリカの木は大体真っすぐ育つので状況は異なるが、トレイルを整備する際にどう考えるかの基準がある。その基準とは、高さ2.5m、幅1.2mのドアを持って歩いた場合に、そのドアが木々にぶつからないかどうかで判断している。」とのこと。木を避けるためトレイルから外れて歩くと、周囲へインパクトが広がる。自然環境への負荷の大きさとハイカーの安全確保を考慮すると、アメリカではこういった木は切る、という答えだった。体格の違いなども考慮されているのだろう。