■2,475mの頂で43座の日本百名山を堪能する甲武信ヶ岳 登山レポ

苔むす樹林帯を縫うように走る千曲川の源流

●紅葉する樹林帯の中、千曲川源流を辿る沢歩き

緩やかな甲武信ヶ岳の登山道を歩きながら、紅葉する木々を眺める

 毛木平から山頂直下にある千曲川の水源地標までの道のりは、総じて緩やかな登り坂が続き、危険箇所は少ない。

 穏やかな沢の流れと、色づき始めた樹林帯を眺めながら歩く道は気持ちのいいものだ。ただし、沢沿いを歩く際は濡れた岩や木の根が滑りやすく、早朝には一部凍っている箇所もあるので、足元に注意しながら進もう。

 登山開始から2時間ほどで、「ナメ滝」の看板が現れる。段差の低い滝だが、緩急さまざまな勢いで流れ落ちる滝の眺めと、その水の音は心地よく、登山者の疲れを癒やしてくれる。

 ナメ滝の看板には「甲武信ヶ岳まで2時間」と書かれており、ちょうどこの地点が中間地点なのだと教えてくれる。ちなみにここまでの区間は樹林帯のため、景色を楽しむことはできないが、10月末に歩いた筆者は、清流と紅葉の美しい景色のおかげで飽きることなく歩くことができた。

凹凸のある岩肌を滑るように流れる「ナメ滝」。付近は滑るので気をつけよう

 さて、さらに1時間ほど進むと、日本一の長さを誇る「千曲川」の源流地点に到着する。

 想像よりはるかに小さい、落ち葉の浮かぶ水溜まり。しかし底からは、悠久の時を経た雪解け水がこんこんと湧き出ていることが分かる。その静かな力強さに感動したのを覚えている。

貴重な千曲川源流の天然水を少し分けていただく

●千曲川源流を過ぎ、向かうは甲武信ヶ岳山頂の大パノラマ絶景!

樹林帯を抜けた先、雲海の奥に浮かぶ富士山が出迎えてくれた

 千曲川源流地を過ぎると、これまでのなだらかな登山道から急な坂道に変わり、20分ほどで樹林帯を抜け稜線に出る。その途端、息を呑むような美しい富士山が。ここまでの苦労が報われる瞬間だ。

 山頂まではあと僅か。登山道は岩場へと変わるが、これを登りきれば山頂だ。はやる気持ちを抑えて一歩ずつ慎重に進もう。

 岩で形成された山頂は、遮るもののない360度のパノラマ絶景を見せてくれる。富士山はもちろん、八ヶ岳に南アルプス、奥秩父(おくちちぶ)の名峰がずらりだ。

 幸いにも筆者が訪れた際には、すがすがしい秋晴れのもとで、はるか遠くの43座もの日本百名山眺望を得ることができ、言葉を失うほどの美しさを堪能した。