国の特別名勝に指定されている山梨県の昇仙峡(しょうせんきょう)をご存じだろうか。「日本一の渓谷美」とも称され、全国観光地百選の渓谷の部で第1位を、平成百選では第2位を受賞している。渓谷には多くの奇石も見られる。

 紅葉の名所としても賑わい、10月下旬~11月下旬に見ごろを迎える。渓谷沿いは遊歩道が整備されているので歩きやすい。

 昇仙峡の散策と合わせて、標高1,058mの羅漢寺山(らかんじやま)をめぐる登山も一緒に楽しめる。昇仙峡の見どころを効率よく周り、白砂でできた独特な景観の羅漢寺山を歩くモデルコースを紹介していく。

■紅葉と白い花崗岩が美しい昇仙峡

仙娥滝(せんがたき)に現れる虹

 昇仙峡は、マグマが固まってできた、白い岩石である花崗岩(かこうがん)が多く見られるのが特徴だ。

 昇仙峡のシンボルといえる覚円峰(かくえんぽう)も、花崗岩が長い年月をかけて浸食されてできている。切り立った断崖が特徴的で、水墨画に描かれた中国の山が目の前に現れたかのようだ。 

 見どころのひとつである仙娥滝(せんがたき)は、日本の滝100選にも選ばれた落差30mほどの滝だ。四季折々の姿を見せ、秋には紅葉とのコラボレーションが美しい。天気に恵まれれば、虹が見られる幸運に出会えるのもうれしい。

 道中、見るからに不安定で、頭上の岩が落ちてきそうな石門を通り抜ける。なかなかスリリングだ。迫力のある大きな奇石もおもしろい。

■白いビーチのような白砂山と丸い大岩の弥三郎岳

白い花崗岩(かこうがん)が美しい白砂山(画像提供:株式会社サンニチ印刷)

 羅漢寺山は、展望台、弥三郎岳(やさぶろうたけ)、パノラマ台を含む山の総称だ。

 昇仙峡を長潭橋(ながとろばし)まで歩くと、そこから白砂山へ向かう登りのルートに入る。ここからは登山の装備が必要になるのでしっかりと備えよう。

 白砂山はその名の通り、白い砂と花崗岩でできている。開けた場所へ行くと、目の前に広がる白い地に感嘆の声をあげる。まるで山の上にビーチがあるかのような不思議な景観だ。

 弥三郎岳へ進むと、山頂近くに半円形の巨大な岩がある。おもしろいほど綺麗な丸い形をしていて、まるで巨大な石球が埋まっているかのようだ。

 人が登れるように階段をつくってあるが、高所感があり登るには少し勇気がいる。登った先には360度の大パノラマが広がり、南アルプスや金峰山、甲府盆地から富士山まで見渡せる。

 帰りはロープウェイを使うと、5分で下山できる。

【昇仙峡~白砂山~弥三郎岳の周遊コース】所要時間
滝上バス停(0:00) → 仙娥滝(0:05) → 長澤橋 (1:20) → 太刀の抜き石(2:50) → 白砂山 (3:30) → 昇仙峡ロープウェイ パノラマ台駅(3:50) → 弥三郎岳(4:10) →昇仙峡ロープウェイ パノラマ台駅(4:30) →昇仙峡ロープウェイ 仙娥滝駅(4:35) → 滝上バス停(4:40)

※弥三郎岳のみパノラマ台駅からのピストン

歩行距離:約11.5km
累積標高差:登り 849m、下り 535m
合計所要時間:4時間40分