徳島県の「祖谷(いや)地方」は、大正時代とされる街道の開通まで外部との交通がほとんど隔絶されていた、V字に切り立つ祖谷渓谷沿いに続く集落。急峻な四国山地に抱かれ、今でも車1台がやっと通れるぐらいの道幅やいくつもの急カーブを越えなければたどり着けない。マイカーでは行きにくい場所でもあり、日本三大秘境のひとつとしても有名だ。

 そこで、祖谷エリアを1日で効率よくめぐれる定期観光バスを利用した体験をレポートする。

■スポット1. 平家落人伝説が伝わる「平家屋敷民俗資料館」

平家屋敷民俗資料館の外観(画像提供:平家屋敷民俗資料館)

 まず、定期観光バスが最初に立ち寄る「平家屋敷民俗資料館」は、平家落人(へいけおちゅうど)伝説が伝わる三好(みよし)市西祖谷山村にある。伝説では、壇ノ浦の戦いで亡くなったとされる安徳(あんとく)天皇の一行は、密かに逃れてこの地に土着したという。

 1185年に平家が滅亡した折に、安徳天皇の御典医(ごてんい)だった堀川内記(ほりかわないき)は、平家一族と共に祖谷に入山し、山野で薬草を採取して、この地で医業と神官を務めた。

郷愁を誘う囲炉裏(画像提供:平家屋敷民俗資料館)

 1867年に建てられた堀川内記の子孫はのちに姓を西岡と改め、代々の屋敷は三好市重要有形文化財に指定され、現在は平家屋敷民俗資料館として活用されている。

 建物内部には、囲炉裏や使い込まれた生活用具などの展示があり、どこか郷愁を誘う。合掌造りの屋敷内を見上げると、囲炉裏の煙によってつくり出された漆黒の屋根裏にも魅了される。

 茅葺き屋根の屋敷の庭には樹齢約800年の名木があり、現在に至るまで時代を見守り続けている。まさに、歴史ロマンを感じられる場所だ。

平家屋敷民俗資料館
住所 〒778-0105  徳島県三好市西祖谷山村東西岡46
電話 0883-84-1408(3月~11月9:00~17:00、12月~2月9:00~16:00)
料金 中学生以上500円、小学生300円
※営業日時はホームページよりご確認ください

【公式サイト】 https://r.goope.jp/heike-1408/

【公式Instagram】https://www.instagram.com/heikeyashiki/@heikeyashki

●【MAP】平家屋敷民俗資料館

■スポット2. 奇岩が連なる峡谷を楽しむ「大歩危峡観光遊覧船」

国指定天然記念物・国の名勝に指定されている峡谷、大歩危

 「大歩危(おおぼけ)」は、吉野川沿いの峡谷で、川岸には奇岩が連なる。大歩危の下流側が「小歩危(こぼけ)」である。

 大歩危は2014年に国指定天然記念物、2015年に国の名勝に指定された。2018年には小歩危が追加され、「大歩危小歩危」が国の名勝に指定された。

ゴツゴツした岩肌が続く大歩危

 古語で「ホケ」は「川沿いの断崖絶壁」を意味する。大歩危は「大股で歩くと危ない場所」、小歩危は「小股で歩いても危ない場所」という意味で、「大歩危小歩危」と呼ばれるようになったともいわれる。

大歩危峡観光遊覧船(画像提供:大歩危峡まんなか)

 この大歩危の奇岩風景と吉野川の清流を楽しめるのが、「大歩危峡観光遊覧船」だ。

 しかし、筆者が訪れた日は残念ながら川の増水のため、観光遊覧船に乗ることはできず、各自周辺を散策するだけとなった。峡谷は上から眺めただけでも十分美しく、きっとまた訪れて観光遊覧船に乗ろうと心に誓った。

大歩危峡まんなか
住所 〒779-5451  徳島県三好市山城町西宇1520
電話 0883-84-1211(9:00~17:00)
料金 大歩危峡観光遊覧船:大人1,500円、 3歳~小学生まで750円
※営業日時はホームページよりご確認ください

【公式サイト】 https://mannaka.co.jp/

●【MAP】大歩危峡まんなか