この夏に放送された、「マウンテンドクター」(フジテレビ系)は、山岳医療にスポットを当てたドラマ。登場人物の人間模様とともに山の厳しさと美しさ伝えてくれたが、ドラマで何度も映し出されてきた山の壮大な景色は見ているだけでもわくわくとした。ドラマに登場する山や山小屋の名称は、架空のものになっているようだが、山好きであれば見覚えのある景色から「この山はあそこだな」なんて思いながら、映像を楽しむ人も多かっただろう。
秋の気配が訪れ、これから紅葉の時期を迎える白馬八方尾根の「八方池」にも、そんな“見たことあるかも!?”な景色が点在している。ドラマのどのシーンに出てきたといった深いところまでは言及しないが、「八方池」のトレッキングルートとともに美しい山の景観をお伝えしていきたい。
■八方アルペンラインで、登山口まで楽々アクセス
八方池の登山口は、白馬八方尾根スキー場の山麓から「八方アルペンライン」を利用してアクセス。八方ゴンドラリフト「アダム」で8分、そこからアルペンクワッドリフトで7分、グラートクワットリフトで5分と、2本のリフトを乗り継いで標高差1,060mを一気に昇っていく。
八方アルペンラインの総延長は3,445m。リフトで最上部まで上がると、そこは標高1,830mもある高所となる。ここまでゴンドラとリフトを乗り継いで、大体40分ほどの所要時間だが、空中から景色を楽しんだり、自然を身近に感じたりしながら移動できる。
■見晴らしのよい尾根を通って、八方池へ
リフト山頂にある登山口から八方池までは、「八方尾根自然研究路」というトレッキングコースの区間。八方池から先まで登る場合は、本格的な登山装備が必要となる。
トレッキングコースは尾根伝いに登っていく右回りコースと、整備された木道をゆっくり上がっていく左回りコースの2ルートがある。どっちのコースを通っても「第2ケルン」で合流するので、どちらを選んでもOKだ。見える景色が違うので、行きと帰りで違うコースを通るというのもおすすめだ。
池までの所要時間は1時間半ほど。トレッキングコースは尾根に沿って唐松岳まで続いており、コースの正面に複数の峰が重なって見えるのがそのルート。コースから見て左側へと、荒々しい山容の五竜岳、双耳峰の鹿島槍ヶ岳、そして爺ヶ岳へと山並みが続いている。2つのピークをもつ鹿島槍ヶ岳は遠目から見てもわかりやすい。この形の山、ドラマのオープニングなどで見覚えがあるのでは?
右に見えているのは不帰ノ嶮(かえらずのけん)と呼ばれるエリアで、「日本三大キレット」の1つとされている急峻な岩場がある山域だ。
■ケルンが点在しているのも特徴
トレッキングコースには、道に迷わないように目印として置かれたケルンがいくつも点在している。リフト山頂の登山口付近に設置されているのが第1ケルン。そこから石神井ケルン(八方山ケルン)、第2ケルン(息ケルン)、八方ケルン、第3ケルンを通っていき、それぞれのケルンが休憩にちょうどよいポイントになっている。
平坦なスペースにケルンが設置されており、ベンチが用意されているところもある。ケルンは道標であるとともに、適度に休憩をとって白馬連峰の山並みをゆっくり楽しめる憩いの場でもあるのだ。ドラマのなかでもケルンで休憩しているシーンがあったので、実際にコースを歩いてみてどのケルンだったのか、見比べてみてもおもしろいかもしれない。
■山を鏡のように映す八方池
第3ケルンが見えたら、尾根のすぐ下に目的地の八方池が見えてくる。ここから見る山並みもすばらしいが、池の畔までおりると休憩スペースがあり、ここで写真を撮ったり、景色に見入ったりしながらのんびりくつろげる。
八方池の魅力は何といっても、白馬三山を鏡のように映す神秘的な絶景だ。人工的な池ではなく、尾根の横の窪地に雨や雪解け水が溜まってできあがった、まさに自然が作り上げた究極のビュースポットなのだ。
八方池まで向かうトレッキングコースには、日本百名山の11峰が見渡せる絶景スポットが点在しているという。秋になると池の周囲のダケカンバやナナカマドが赤や黄色に色づいて、より華やかな風景が広がっている。
池の紅葉がはじまるのは例年であれば9月中旬ごろから。また、ゴンドラ付近は10月中旬あたりから紅葉の見ごろになる。ドラマで見た美しい山並みを探しに、四季折々の美しさが広がる八方池へと出かけてみよう。
<おすすめルート>
八方アルペンライン山頂→八方池→八方アルペンライン山頂
(所要時間:約2時間30分)