■移住を決めた理由その2 米どころならではの田んぼの風景

夕日が実った稲穂を照らす田んぼの景色

 秋田県といえば、米の産地として有名だ。旅行などでたまに見かけることはあれど、一年を通して田んぼの景色を見られるのは、やはり米どころだからだろう。

 家のすぐ近くに田んぼがあったので、毎日のように田んぼの景色を見ていた。どの時期も田んぼはすてきな景色を見せてくれるのだが、5月あたりの水鏡の景色。9月から10月にかけて見られる稲穂が首を垂れている光景がとくに好きだ。

 水鏡の景色では、田んぼに水が張られ始めた時期に、風景が水面に反射して見える。周りの自然が水面に映る光景を日常的に見られる環境は本当に贅沢で、つい長時間見入ってしまう。

 稲穂が実り、首を垂れてる光景を見ると、水を張った田んぼから田植えをし、稲が成長する一連の風景を見てきているからか、感動すら覚えるのだ。

 ひとつ苦手だったことは、虫が首都圏に比べて大量にいたことである。虫がいるのはわかっていたものの、網戸に思った以上に虫がいて外でなかなか洗濯物が干せなかった。そして、虫の鳴き声も夜になるとよく聞こえるので、特に移住しはじめの頃は気になることも多かったのだ。

 だが、それを補って余りあるほど田んぼの景色は生活の中の癒しとなっていた。

■移住を決めた理由その3 のどかで日本の原風景のような景色

車通りが少なくそのままの自然が残る場所

 首都圏から秋田県までは片道5時間ほど。筆者が住んでいた町には駅もなく、交通の便はよいとは言えない。スーパーへの買い物など、何をするにも車がないと不便で、決して住みやすいとは言い難い場所である。

 全国にはこのようないわゆる「田舎」はたくさんあるが、筆者が感じるそれら地域と秋田県との決定的な違いは「目の前に広がる原風景」だ。秋田県という場所で時間を重ねるほど、この場所にしかない唯一無二の風景は、便利さや暮らしやすさといった生活面の利点よりも大切なものであると感じた。

 心が安らぐ時間がすぐ目の前に広がることは、このうえない贅沢なことなのだ。

■滞在するほどに好きになる秋田県

 秋田県には自然に囲まれた地域が多く、住むことでしか感じ得ないすばらしさがある。もちろんアクセスなど不便な点もあるが、それゆえに見られる景色もある。

 筆者自身、住んだことで秋田が本当に好きになったからこそ、ぜひ皆さんにも一度秋田を訪れてほしい。そして、すばらしい自然を見て、触れて、感じてほしい。