■人生に無駄なことはひとつもないのだな
熱があって具合の悪い私がいつまでも小屋にいると、休業期間が伸びてしまいそう。そう考えた私は、日暮れまで歩き続けて下山したのだった。
小屋から背負ってきたコーラが苦く感じて、尾骶骨も痛くて。頭もぼーっとして、不安で涙も出た。今思い返すと、自力下山の判断が正しかったとはとても思えない。しかし、それがわからないくらい混乱していた。
そんな地獄のような8月と比べると、3年目の今年はスタッフ全員が元気でいられて、それだけで120点満点だ。賄いもちゃんと作って、モリモリ食べている。爪も割れてない。
朝4時から19時半の消灯まで、勤務時間は相変わらず長いけど、それでも体の調子はすこぶるよい。野菜や果物などを差し入れしてくれるお客さんのおかげさまだ。見ず知らずの私たちに「頑張ってね」と長い距離を背負ってきてくれる方がいる。本当にありがたい。
2年前の休業期間があったからこそ、光岳小屋はいろんなことを少しずつ改善して、生活や働き方を工夫できるようになった。人生に無駄なことはひとつもないのだなと実感する。
ちなみに、休業後に山小屋に戻ると、コロナ休業を心配してくれたお客さんが、「山小屋でコロナなんて、ホラー映画じゃん」と言った。ホラー映画の主人公なんて、散々な目に合うに決まっている。勘弁してほしい。
今シーズンは、残りも元気に事故や怪我なく過ごしたい!
健康が一番だと、心の底から思う。