富士川と天竜川に囲まれた南アルプスは、長野・山梨・静岡の三県にまたがり、3,000m級の峰がそびえる山脈。

 山好きが最後の秘境とも称す南アルプスに位置する鳳凰山(ほうおうざん)は、地蔵岳(じぞうだけ・標高2,764m)、観音岳(かんのんだけ・標高2,840m)、薬師岳(やくしだけ・2,780m)からなる山の総称だ。なかでも地蔵岳の山頂にそびえる花崗岩の大岩塔、通称「オベリスク」は、他の山の山頂から見えることが多く、登山者の憧れの地としても知られている。

 そんな鳳凰山は標高こそ高いが登山道がしっかり整備されており、鳳凰小屋を利用して1泊2日で日程を組めば挑戦しやすい。

 今回は、2018年と2023年の7月に筆者が訪れた時の様子と合わせ、鳳凰山の地蔵岳を目指す1泊2日の登山の魅力を紹介しよう。

■青木鉱泉から鳳凰小屋へ

 地蔵岳山頂を目指す登山口はいくつかあるが、青木鉱泉からスタートするコースを紹介する。青木鉱泉は中央自動車道・韮崎ICから1時間程度の場所にある。宿泊者以外も1日800円で車を停められる(バイク400円)ので、登山届を出して準備を整え登山へ挑もう。

青木鉱泉の駐車場。しっかり荷物を確認して登山に挑もう

 青木鉱泉から鳳凰小屋までは約6時間。長時間の歩きになるので、自分のペースを守って休憩を挟みながら進もう。コース途中にある「鳳凰ノ滝」「白糸(しらいと)滝」「五色(ごしき)滝」を休憩スポットに、沢沿いの道を進む。

 まずは2時間30分ほどで着く鳳凰ノ滝へ。樹林帯の整備された道が続き傾斜もなだらかなので、ウォーミングアップには最適。途中小さな滝がいくつもあるので、景色を楽しみつつ沢のせせらぎを聞きながら自分のペースで進もう。

 朝8時頃に出発し、10時30分頃に到着。小休止をとって次に目指す白糸滝へ。鳳凰ノ滝から白糸滝まではつづら折りの急登を歩くので、水分と行動食をとってパワーチャージしておこう。

鳳凰ノ滝から白糸滝へはつづら折りの急登が続くのでしっかり休憩しておこう

 鳳凰ノ滝から1時間30分ほどで白糸滝に到着。筆者の体感ではこの区間が今回のコースの中で一番きつく感じた。登山口から白糸滝までは4時間。お腹も空いたので、滝を眺めながらお昼休憩をとり、体力と気力を回復させた。

急登を登りきり、白糸滝へ到着
滝の音を聞きながらの昼休憩で体力を回復

 お昼ご飯を食べて休憩したのち、2時間かけて鳳凰小屋を目指す。まずは1時間ほど歩いたところにある五色滝でひと息入れる。白糸滝からはザレ場が少々やっかいだが、徐々に傾斜は緩やかになっていく。五色滝は滝壺に降りられるので、滝の迫力を間近で感じることができる。いくつもの滝を見られるので、歩いていて楽しいのがこのコースの魅力のひとつだ。

五色滝は滝壺付近まで降りられる

 五色滝から鳳凰小屋まで1時間。この区間もやや急登だが、地蔵岳のオベリスクが見えると小屋まであと少し。3,000m級の山にしては難所が少ないが、コースタイムを要する今回のルート、筆者のペースで青木鉱泉から鳳凰小屋まで6時間30分で着いた。

 鳳凰小屋では山小屋泊とテント泊ができる。この時はテント泊を利用したが、2024年7月現在、鳳凰小屋は建て替え工事中(2024年秋から利用可能。予約は8月から可能)となっている。

2023年7月に訪れた時の鳳凰小屋のテント場。たくさんのハイカーが訪れていた
翌日の山頂アタックに向けてしっかり食べてしっかり休む