今シーズンはとりわけテント泊、単独行の登山客が増えていると聞く。密を避けつつ自分に見合った山旅をはじめてみたいが、日帰りに比べ荷物は重くなるし、不測の事態に備えてスケジュールには余裕を持たせたいところ。けれどもコースの楽しさやピークからの景色は捨てがたい。そして都心からもアクセスしやすいところがいい。

 そんな要望に応える1泊2日のルートを紹介したい。

■青年小屋をベースキャンプに、2つのピークへアタック

【コース概要】
 観音平登山口から雲海展望台を経て押手川分岐へ。分岐からは編笠山を迂回して青年小屋へ向かうルートをとる。青年小屋で設営ののち編笠山へピストン。ここまでが1日目だ。
 翌日は権現岳をピストンし、青年小屋での撤収を済ませて、来た道を戻る。道中は大きく分けて樹林帯とガレ場や岩場に分かれていて変化に富み、ところどころで甲斐駒ヶ岳、富士山、中央アルプスへの展望も開ける。
 10キロ前後にはなる1泊装備を背負っての行程は青年小屋までで、あとは軽装備で2つのピークが踏めるので、ちょっとしたベース&アタック気分が味わえるのも魅力だ。

この日はとにかく暑かった!  雲海展望台

■都心から2、3時間で登山開始。まずは緩やかにスタート

 7時新宿発のあずさ1号で小淵沢駅に8時53分到着後、軽く腹ごしらえを済ませタクシーで登山口へ。登山届の記入などの準備をしても、10時にスタートすることができた。

 まずは見通しの良い森と膝丈ほどの笹薮に続く道を行く。なだらかな登りが続き足慣らしにはちょうど良いので、はやる気持ちを抑えてゆっくり歩を進める。

 1時間ほどで着く雲海展望台は視界が開けベンチもあるので足を止めたいところだが、日差しや風雨を遮るものがほとんどない。少し過ぎたあたりでスペースを見つけ、一息つくのがよいだろう。

 ここから先の樹林帯では、林床の苔や突如現れる自生キノコ、木の根と奇岩のコラボなど、自然の造形に目を奪われていると、野生動物のフンが足元に現れるので踏まないように気を付けよう。赤テープに従って進むと、休憩ポイントの押手川の分岐に到着。時刻は12時だ。

押手川では後半戦に備えよう

■森の深部を進むにつれ、徐々にルートは険しく…

押手川は、そよ風と木漏れ日が心地良い、オアシスのような雰囲気が漂う小さな床谷だ。山梨の県有林100選の看板も見え、大抵の登山客は倒木や岩石に腰掛け体を休める。

 ここから分岐ルートを青年小屋へ進むと一気に森が深さを増す。岩の隙間に足を差しこみ、倒木をくぐる、ぬかるみが残る場所もあるし、三点支持でよじ登らなくてはならないような段差もある。道幅も狭まり周囲は鬱蒼としてくるので、精神的にじわじわとこたえる道が続く。

 湿っぽい森をようやく抜けてダケカンバが目立ってくると、15分ほどで青年小屋に到着だ。途中励ましのように“青年小屋まで20分”の案内があるが、20分では着かないので気を付けよう。

編笠山中腹から青年小屋を見下ろす。小屋の脇がテント場。ここまでは巨石に記されたマーカーを道標に、岩づたいに登る
編笠山山頂にて甲斐駒ヶ岳と対峙

■ベースキャンプを設営し、編笠山へ向かう

 ベースキャンプ設営後、編笠山への登頂開始。往復約1時間の行程だ。ゴロゴロと頂上から転がってきて集積したかのような巨石を踏みつつ中腹まで登ると一転、ハイマツをかき分けて進む道となり、その先には正面に南アルプスと麓の街並み、東に富士山が見渡せる絶景山頂が待つ。

山の懐に抱かれた、静かなキャンプ地。青年小屋名物「赤ちょうちん」も早めの閉店
険しい権現岳のピークは2日目に攻略する