■モンテ・ローザの雪景色の大パノラマが広がるグラン湖

 山小屋を出発して約2時間半、最後の急な登り坂を乗り切って、ようやく今日の目的地であるグラン湖に着いた。湖の入り口は石が積み上げられて小さな堤防が造られていた。この湖から流れ落ちる水が、公園内を流れる清流となって訪れる登山客を癒してくれているのだ。堤防越しには、真っ白な雪を頂くモンテ・ローザ山脈の大パノラマが見渡せ、なんとも言えない清々しい気持ちで胸がいっぱいになった。

  素晴らしい大自然に抱かれて、ここでしばらく休憩。湖の裏手にある山頂まで登ることも出来たが、今はアグレッシブに動くより、湖底まで覗ける透明な水を湛えた湖面を静かに眺めていたかった。湖では小魚が気持ちよさそうに泳いでいる。覗き込んでみると、湖底に平べったい石がきれいに並んで立っているのが見えた。ヴァッレ・ダオスタ州の山の家で瓦がわりに使われている「テゴレ」という板状の石があるが、ここの湖底にも不思議な板状の石がたくさんある。アルプスの渓谷の村はどこもこのテゴレで屋根を覆った家々が並んでいて、古くは1200年代から残っている家もある。昔から、この平べったい板状の石は、加工の必要もなしに屋根をしっかり覆ってくれる最適な建築材だったのだろう。山の恩恵を余すことなく受け取り、山の自然と共に生きる人々の暮らしに思いを馳せながら、最高のリラックスタイムを過ごした。

標高2,492mのグラン湖畔から、モンテ・ローザ山脈をのぞむ
アルプス山脈で2番目に高いモンテ・ローザは、イタリアとスイスの国境にある山群の総称。最高点はイタリア国内標高4,634mのプンタ・デュフール
アオスタ渓谷最大の自然湖である「グラン湖/Gran Lac」(イタリア語ではラーゴ・グランデ」
湖底に横たわるきれいに並んだテゴレの石