■17世紀に貴族の別荘の庭として造られた広大な芸術庭園
メトロのフラミニオ駅を出て左手にあるモニュメントをくぐると、なだらかな登り坂の並木道が現れる。市バスも通る公園内の大通りと、それに沿った遊歩道が並行して公園の中心部を横断しているが、遊歩道は途中から公園の中心部に向かって多方面へ枝分かれしていく。
緑の並木道を進むにつれ、車の喧騒は徐々に遠くなり、代わって小鳥たちの囀りが聞こえてくる。大通りの分岐点から車道と反対側に延びた小道を選んで歩いていくと、知らず知らずのうちにボルゲーゼ公園内の自然散策コースに出ていた。道沿いにはところどころに大理石の彫刻や噴水が置かれ、ただ歩いているだけでもなんとなく贅沢な気分になってくる。
ボルゲーゼ公園はその名の通り、もともとはローマの大貴族ボルゲーゼ家の別荘の庭園として造られたもので、16世紀にはこの敷地の中核部分はボルゲーゼ家の私有地だった。その後17世紀に、シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿が周囲の土地を買収して拡大し、建築家のフラミニオ・ポンツィオに庭園の設計を依頼。ボルゲーゼ枢機卿が後援者となっていたバロック芸術の巨匠・彫刻家のジャンロレンツォ・ベルニーニなどの芸術家も参加し、1633年に壮大かつ豪華な庭園が完成した。ちなみに、公園内にあるボルゲーゼ美術館はこのベルニーニの彫刻のコレクションが多数展示されていることで知られている。