■シラビソの森の中を歩いて黒百合ヒュッテへ

 渋の湯から黒百合ヒュッテまではおよそ3時間の道のり。コースタイムでは2時間15分ほどであるが、それは積雪のない時期のこと。積雪期はいつもよりも時間がかかるので余裕を持って行動したい。渋の湯から黒百合ヒュッテまでは積雪も深いため、アイゼンやゲイターなどが必要となる。降雪に備え、防水性の高いウエアをチョイスするのも忘れないでほしい。

つづら折りの登山道。雪が深いのでアイゼンを効かせながら登る(撮影:山歩ヨウスケ)

 渋の湯から本格的な登山道となり、序盤は勾配も急で一気に標高を上げていく。樹林帯歩きがほとんどのため、滑落の危険などは少ないがアイゼンを装着し、一歩一歩慎重に進んでほしい。これから雪山にチャレンジしたいと思っている人にとってはちょうどいい練習の場と言えるだろう。

■黒百合ヒュッテは、天狗岳やにゅうへのアプローチ拠点にできる

 黒百合ヒュッテの名物ビーフシチューをメインに紹介したが、どうせ山に登るなら絶景も見たい人は多いはずだ。

 黒百合ヒュッテからは天狗岳(2,646m)への登山に適している。天狗岳のほかにもにゅうへの登山もしやすい。黒百合ヒュッテから天狗岳へはピッケルなどの装備が欠かせない。森林限界を超えるため、もし目指すのであればしっかりと装備を整えて向かおう。

黒百合ヒュッテからにゅうへと向かう途中の展望地。右が西天狗岳、真ん中が東天狗岳。左に見えているのは硫黄岳(撮影:山歩ヨウスケ)

 天狗岳もにゅうもどちらも行くにはそれ相応の装備と時間を要する。行くのが難しい人には黒百合ヒュッテから15分で行ける中山峠をおすすめしたい。中山峠からは西側の展望がよく、運が良ければ雲海を見ることもできる。

中山峠から望む雲海。天狗岳やにゅうに行かなくても黒百合ヒュッテから15分で絶景が広がっている(撮影:山歩ヨウスケ)

■静かすぎてびっくりする! 雪山を歩いてみよう

筆者が訪れた時にはマイナス15℃まで冷え込んだ(撮影:山歩ヨウスケ)

 雪は音を吸収するため、森の中はとても静かだ。氷点下の世界では樹々は凍りつき樹氷となり、自然の作る造形を楽しみながら歩くことができる。普段とは違う白銀の世界の中を歩いてみてはどうだろうか。

●【MAP】黒百合ヒュッテ

●【MAP】渋御殿湯有料駐車場 長野県茅野市湖東

〈アクセス〉
中央自動車道・諏訪南ICから県道191号線経由で34分(22.5km)