キャンプ漫画『ゆるキャン△』の影響もあり、寒い冬にあえてキャンプを楽しむ「冬キャンプ」の人気が定着している。
作中でも紹介されているように、冬キャンプは「虫がいない、汗をかかない、ほかのキャンパーが少なくて静か、焚き火と温泉が気持ちいい、景色が遠くまでキレイに見える、汁物がうまい」という利点づくし。作中で描かれているのは基本的に冬キャンプなのだ。
筆者も『ゆるキャン△』を見て冬キャンプにハマり、雪のない温暖な地域でキャンプを楽しんでいるファンのひとり。作中のキャラクターたちと同じように冬ならではの過ごしやすさに魅了される一方、失敗や苦い経験をした思い出もある。
今回は冬キャンプ歴4年目の筆者が実体験した、冬キャンプの「天国と地獄」のエピソードを紹介しよう。
■冬キャンプの天国エピソード
●この時期しか見られない景色に出会える
冬キャンプでは気候や場所にもよるが、寒い時期ならではの景色を眺めることができる。特に筆者のおすすめは、冬の朝に水辺で見られる「気嵐(けあらし)」だ。
気嵐とは、夜間の冷たい空気が外気温よりも暖かい湖面や海面に流れ込み、水面上で急激に水蒸気が冷えることによって、霧が発生する気象現象のこと。
筆者は湖畔サイトが特に好きで、冬場は雪の降らない地域の湖周辺でキャンプをすることが多い。雪は降らないが気嵐ができるほどに夜間は冷え込む場所で、風のない日の明け方にだけ見ることのできる景色はなんとも幻想的で、まるで天国にいるかのような光景だ。
湖畔の冬キャンプでは寒い中頑張って起きて、気嵐を眺めながらコーヒーを飲む至福の時間を過ごしている。『ゆるキャン△』でも言及されているように、夏に比べてほかのキャンパーが少ないため、早起きをするととても静かな朝を迎えられる。
しんとして澄んだ空気の中、温かい飲み物を飲みながら、景色をゆったりと眺めるのは、冬キャンプの醍醐味のひとつだと感じている。
●鍋料理が一段と美味しい
冬キャンプの楽しみといえば外で食べる鍋物だ。寒い中、熱々のご飯を食べるのは「マッチポンプ」的な楽しみ方とはいえるが、これがなかなか癖になるのだ。
ちなみにマッチポンプとは「自らマッチで火を点け、ポンプの水で消火して見返りを求める」といった自作自演を表す和製英語。『ゆるキャン△』では主人公が自らバイクで凍えて温泉で温まる状況を「マッチポンプ」と表現したのは有名な話だ。
あえて凍えるような寒さの中、熱々の鍋料理や汁物をハフハフしながら味わうのはまさに「最高!」の一言。さらに、屋外で食事をしていても虫が寄ってこないのが冬ならではの魅力といえる。
鍋物を食べている間は体が芯から温まり、汗ばんでくることもある。汗冷えしないように防寒着を調整して、思いっきり冬の鍋料理を楽しもう。
●景色が遠くまで見通せる
冬は気温が低く空気の対流活動が弱いことから、空気中に水蒸気やちりが少なく、夏に比べて空気が澄んで遠くまで見渡せる。この「遠くの景色までよく見える」のが、冬キャンプの楽しみのひとつでもある。
昼も夜も、遠くの山や海岸線がよく見渡せるので、コーヒーなどを飲みながらまったり過ごすのが冬キャンプでの筆者お気に入りのひととき。場所にもよるが、星空や夜景がより鮮明に見えることも多く、筆者にとっては寒さを我慢するモチベーションにもなっている。
筆者はどちらかといえば寒いのが苦手だが、冬ならではの美しい景色を見るためにキャンプに繰り出し、「寒い寒い……」と文句を言いながら大自然を見渡す時間が実は気に入っている。普段の喧騒を忘れて、澄んだ冬の空気をぼーっと堪能するのもおすすめだ。