2023年08月26日、北関東最大の都市・栃木県宇都宮市に新たな鉄道路線が開業した。その名はLRT方式の宇都宮ライトレール宇都宮芳賀ライトレール線 (ライトライン)。LRTとは「次世代型路面電車システム」と言われる軌軸系交通機関で、海外では広義にライトレールと呼ばれることもある。

 近年では富山市の「富山ライトレール」での成功事例もあり、環境負荷の軽減、道路渋滞の緩和などが期待される鉄道路線の方式である。

 今回の宇都宮芳賀ライトレール線が地元に与える影響次第では、このLRT方式の新線建設が今後の日本でさらに進んでいく可能性もあるのだ。

■日本初! レールを新設したLRT

LRT(ほぼ路面電車)なので、道路との並走区間もある

 すでに親しまれている富山ライトレールは、元々JR西日本の路線だったところをLRT方式に改良して生まれた路線だ。一方、ライトラインは元々何か別の鉄道路線があったわけではなく、今回の開業に合わせて全てを新設しており、全てを新設して開業したLRTとしては「日本初」となっている。

 すごいのはレール新設だけではない。路面電車の車両は、一般的な鉄道車両よりも「小さくて、狭い」という印象を持たれがちだが、ライトラインの場合は最新型のLRV(超低床車両)を導入。1編成全長約29.5m、車体幅約2.65mという大きさはLRTの車両としては日本最大級。また、1編成の定員は一般的な通勤型車両の中間車1両分と同程度、160人という広さを誇る。

 ぜひ一度は日本初の全線新設のLRT、そして日本最大級のLRT車両を体験しに、栃木県宇都宮市を訪れてみてはいかがだろうか。

LRT車両 HU300形 (ライトライン)の車内。ちなみに車内にはFree Wi-Fiが完備されている

■まだ、あまり知られていないライトラインの旅

 ここまで路線の魅力を紹介したが、「新路線でワクワクするのは地元の人や鉄道ファンだけ」「大きな車両でワクワクするのも鉄道ファンだけ」と思う方も多いだろう。

 実際のところライトラインが走っているところを見ると、宇都宮駅周辺の主要な観光スポットと呼べる場所とは異なる場所を走っている。また、宇都宮駅の観光案内所でライトライン沿線の観光スポットの相談してみてもこれといった場所はないようで、ライトラインの楽しみ方として「終点まで乗り通して折り返してくる」とか「かしの森公園手前の急勾配区間」といった答えが返ってきた。

 そこでここからは、これまでさまざまな街を訪れてきた筆者が実際に訪れて発見した、ライトライン乗車体験と合わせて楽しめる、沿線スポットをいくつか紹介する。

 まず1つ目はスポーツ観戦。ライトライン沿線には、スポーツの試合会場となる場所が複数存在する。その筆頭がブレックスアリーナ宇都宮。バスケットボールBリーグ宇都宮ブレックスのホームであるこの体育館では、Bリーグの公式戦はもちろん、女子バスケットボールWリーグや、卓球Tリーグの試合が行われることもある。

 ブレックスアリーナ宇都宮以外にもプロ野球の公式戦が行われることもある宇都宮清原球場や、サッカーJリーグの公式戦が行われることもある栃木県グリーンスタジアムも沿線にあるので、ぜひ訪れてみてほしい。

Bリーグ宇都宮ブレックスのホーム、ブレックスアリーナ宇都宮(写真提供:宇都宮ブレックス)

 2つ目は企業のミュージアムや工場見学。北関東の最大の都市である宇都宮にはさまざまな企業のミュージアムや工場が集まっており、それがライトライン沿線に揃っている。

 いずれも予約必須ではあるが、ハウスメーカー「セキスイハイム」のミュージアムでは4Dシアターで自然災害の擬似体験ができ、食品メーカー「カルビー」の工場ではかっぱえびせんの製造工程が見学できるなど、新路線に乗って体験しに行ってみるのもおもしろいだろう。

沿線を歩いていると突如現れる外観が独特で印象的なセキスイハイムのミュージアム

 そして、最後に紹介するのがベルモール。ベルモールは映画館あり、フィットネスクラブあり、温泉施設ありの大きなショッピングセンターだが、魅力はそれだけではない。なんとこのショッピングセンター、アルパカがいるのだ。

 大型ショッピングセンターはどの街にもあるが、アルパカのいるショッピングセンターとなると非常にレアな場所ではないだろうか。話題の新路線に乗ってアルパカに会いに行くというのも話題作りにはもってこいだ。

かわいいアルパカさんがいるベルモール。アルパカ広場はなんと常設
ベールモールの駐車場に入るために右折待ち。地元の人曰く、ひどい時は信号を4〜5回パスすることもあるそう