■夜釣りは冒険のはじまり
夜の海に立ち、星座の輝き、波の音、船の汽笛が心地よい瞬間は釣り愛好家にとって特別なもの。なかでもサビキ釣りは誰でも簡単に楽しめるので、夜釣りの定番スタイルだ。暗闇の中、手元を照らし、カゴにコマセを入れて海面に仕掛けを落とし、ロッドを上下に振るだけ。その間、折り畳み椅子に座って静かに夜景を楽しみながら「どんな魚が釣れるのか?」との思いを胸に魚の反応を待つ。ワクワクしながら過ごすゴールデンタイムである。
サビキ釣りは大きく分けると、関西式と関東式の2つがある。釣具店に並ぶサビキ仕掛けのパッケージに関西式と関東式を記載しているものがあるので、すでにご存知の方も多いだろう。
■サビキ釣りの魅力を知る
関西式と関東式の特徴的な違いはコマセカゴの取付位置にある。それぞれの釣り方の特徴やメリットを挙げてみた。
●関西式
サビキ針の下にコマセカゴをセットしたもの。別名「下カゴ式」と呼ばれる。仕掛けを海面に落としコマセカゴを海底に沈めてからサビキ針の位置を魚のいる層に合わせてリールを巻き上げる。竿を上下に振ってシャクリを入れ(コマセカゴを振る)、コマセカゴから出るコマセ(寄せエサ)で煙幕を作り、魚をおびき寄せる。シャクリは50㎝程度の動きが目安。仕掛けのバランスが良いため海中をスムーズに落下するほか、遠投のしやすさもある。また、手を汚すことなくコマセカゴでコマセを掬える手返しの良さも特徴。煙幕に小魚が集まりやすく、海底付近のイワシやアジなどの大群を狙うのに適している。
●関東式
上からコマセカゴ、サビキ針、オモリの順にセット。別名「上カゴ式」と呼ばれる。仕掛けを海中に落としたらすぐさまロッドを小刻みにシャクリ、コマセを魚のいる層に漂わせ、おびき寄せた魚をサビキ針に食いつかせる。コマセの煙幕でおびき寄せるのは関西式と同様だが、おびき寄せた魚をルアーと組み合わせて釣り上げる手法もあり、大型魚狙いのアプローチとしても使用される。コマセカゴがサビキ針より上にあるため、比較的水深の浅いポイントや中層より上にいる魚が狙いやすい。また、コマセカゴから散布するエサの量を確認(目視)しやすいため、魚の反応に合わせてコマセ量や粘度を調整しやすいのも特徴。
なお、関西式と関東式の比較を図にまとめてみたので、サビキ釣りの参考にしてほしい。
■必要な装備と用意
サビキ釣りを楽しむための装備は関西式が3点、関東式は4点(関西式に加えてオモリが必要)である。以下にその装備を紹介する。
【ロッドとリール】
サビキ釣りには軽量で取り扱いやすいロッドが適している。リールはラインの巻き取りを行うために重要で、ロッドと同様に軽量なものを準備しよう。なお、高価なタックルを準備する必要はなく、釣具店にサビキ釣り用として販売されているリーズナブルな3点セット(ロッド&リール・サビキ仕掛け・コマセカゴ)で十分楽しめる。もちろん自身で気に入った道具を選んで購入して組み合わせるのももちろんありだ。
【サビキ仕掛け】
サビキ仕掛けは5~6本の釣り針が付いているものがほとんど。対象魚種は主に「アジ」「サバ」「イワシ」。たいていの仕掛けは関西式と関東式のそれぞれに特定しているものはなく、コマセカゴとオモリの付け方の有無で使い方が決まるので、サビキの種類は一様である。あとは、ターゲットとする魚のサイズに合わせて針のサイズを決める。アジの場合、小型(10cm程度の豆アジ)なら6号、中型(20cm程度)なら7号が基準となる。
【コマセカゴ】
コマセを入れて水中に吊るし、魚を誘引するために使用する。カゴのデザインはコマセのばら撒き方に影響する。メッシュ状や穴の大きさが違うもの、またコマセの大きさ、粘度によって拡散効果(早く拡散するか、遅く拡散するか)は異なる。ビギナーは最初標準的なカゴのデザインとサイズで問題ない。なお関西式はオモリ付きコマセカゴが主流。
【オモリ】
関東式なら、釣り場と対象魚種に合わせて選定する。一般的な小型のアジを狙う場合は、6号が標準の重さである。関西式のオモリ付きコマセカゴ使用の場合は別途オモリは不要となる。
【コマセ】
魚をおびき寄せるための撒き餌(まきえ)であり、大きく3種類(オキアミ、アミエビ、魚のミンチ)がある。一般的にオキアミは粒が大きく、アミエビは粒が小さい。魚のミンチはペースト状で、これらの選択はコマセカゴの選定により拡散効果に影響を与える。
■サビキ釣りの基本ステップ
今回、筆者は自宅近くの漁港(神戸市長田区)にて、夜釣りを楽しむことにした。漁港は人通りが少ない道沿いにあり、港から星空と沖にある建物の明かりがきれいに見え、静寂な空間で釣り人も少なく、夜景を楽しみながら静かに釣りができる好スポットである。筆者はここで関西式と関東式の2通りの仕掛けでサビキ釣りを楽しみ、その釣果を比較することにした。
●釣り場の事前調査と潮見
自宅近くの漁港は港の入口から釣り場まで10m程度の距離であり、足場は平面の広いアスファルトで障害物はなく、夜間の歩行も危険性はない。スマートフォンの潮見アプリで満潮から潮が動き始める20時前後に釣りをすることにした。
●釣り場に到着、仕掛けの海中投入とシャクリ
港に到着後、関西式と関東式のサビキ仕掛けのカゴにコマセを入れ、まずは関東式の仕掛けを海中に投入、小刻みにシャクリを繰り返し、2回目にして早々にアタリがあった! 引き上げてみると…… メバルだ! 幸先の良いスタート!