雪が解け山のアクティビティもグリーンシーズンに突入。キャンプや登山の計画を立てる人も多いのではないだろうか。
しかしながら、この時期はクマに出会い、事故に遭う被害も多い。本州に生息するツキノワグマは通常、12~4月まで冬眠しており、登山客が増える4~5月は「お目覚めの時」なのだ。
そこで、本記事では筆者自身がかつて長野県の上高地ビジターセンターでクマ講習会に参加して教わったことをもとに、気をつけるべき4つのポイントについて記載していきたい。
ちなみに上高地一帯は、環境省発行「上高地地域のツキノワグマ対策 実践マニュアル」に沿った対策をしている。
■クマは凶暴ではなく「怖がり」
まず勘違いされがちなのは、決してクマは「凶暴な性格ではない」ということだ。むしろ臆病で怖がりだという。
その証拠に、ヒトや動物の気配を感じるとクマのほうから距離をとってくれる。よく「クマよけの鈴を持って行け」と言われるのも、クマがヒトの存在に気付いて避けてくれる効果があるからだ。そして臆病だからこそ、人間に出会った時にクマはパニックを起こし襲ってしまう。そのため、登山に行く方はクマよけの鈴等を持っていくことを心がけよう。
■クマは自分のモノにこだわる
モノに執着するのはツキノワグマもヒグマも同じだ。一度触れたものは「自分のもの」と認識して執着する。仮にそれを取られると、取り返すためにどこまでも動き続ける。クマの嗅覚は犬よりも優れていて、一度触れたものに残ったにおいを頼りに探すという。
この「モノの執着」による被害として有名なのが、1970年に北海道日高山系で発生したヒグマによる福岡大学ワンダーフォーゲル部員襲撃事件だ。最初に襲われた際にヒグマに荷物を取られそうになり、ワンダーフォーゲル部員はそれを奪い返して逃げるように移動した。しかし、ヒグマは自分のものと認識した部員の荷物を取り返すため、1日以上かけて彼らを追いかけ、そして見つけると襲って3名の犠牲者を出してしまった。
もし、クマに触られてしまったものがあれば、躊躇なく置いていくのが無難だろう。持っていかれては困る貴重品類はポケット等、クマが直接触れないであろう箇所にしまっておくのが賢明だ。
■食べ物、ゴミをしっかり管理する
私が講習会を受けた長野県の上高地でも、2020年に人通りの多い小梨平キャンプ場で女性キャンパーがツキノワグマにテントごと襲われる事件があった。
原因はツキノワグマが人間の食べ物の味を覚えてしまったことだ。先述の通りクマの嗅覚は人間の比ではない。人間の食べ物に執着してしまい、たどり着いた先がキャンプ場で、テントを漁ろうとしてたまたまテントの中にいた人間に爪が引っかかり傷つけてしまったというわけだ。
小梨平キャンプ場では再発防止策として、食料保管用のコンテナを設置し、キャンパーに対し必ず食糧はすべてコンテナに入れ、ゴミもしっかり捨てるよう強く呼びかけている。
他のキャンプ場でコンテナのようなものはなかなか見当たらないだろうが、食後の食器類はしっかり洗って、余った食材はジップロック等密閉できる袋に入れ、においを発しないようにしておくことが大切だ。
・施設名 小梨平キャンプ場
・住所 長野県松本市安曇上高地
※営業日時はホームページに記載。なお、2023年は4月20日オープン予定。
ホームページURL https://www.kamikochi.or.jp/article/show/52
■クマと目を合わせながら逃げる
しかし、クマの棲む環境に人間がお邪魔しているのだから、遭遇する確率を0にするのはキャンパーや登山者にとっては不可能なこと。
そこでもし遭遇した場合の対処方法について、講習会で教わった内容を一部紹介したい。「死んだふりをしろ」というのが古くからあるが、現在は逃げるのが一番という考えにシフトしている。その逃げ方で最も大切なことは「背中を見せないこと」だ。
クマと目を合わせながら後ずさりするようなイメージで、クマを刺激しないようにゆっくり距離をとること。また、クマよけスプレーを持っていくことも大切だ。
■最後に
ニュース等でクマによる被害を見かける度に、クマに対して怒りを覚える人がいるかもしれないが、講習会で何度も教えられたことの一つに「人間がクマの居住区に侵入していることを忘れるな」というのがあった。
標高の高い山林地帯は、クマの居住区。人間はその居住区に「お邪魔させていただいている」気持ちを持つことが大切なのだ。クマの生態や対策を知ることで、クマと人間が安心していられる空間作りに努めたいもの。
最後に、山林地区へ行く場合にはクマの目撃情報を事前に調べておくとよい。
参考までに上高地ビジターセンターHPに掲載されているクマ目撃情報のサイトを紹介させていただく。
山へ入る前には、いざという時のための準備をしておくことが大切だ。