■証、保障、護符と多様な役割「古代の印章(ハンコ)」
現代でも(とくに日本や中国など)印鑑やハンコなど大事なものですが、それは古代でも同じでした。石などに文字や文様や形を彫り、それを粘土や石膏などに捺し、印影を付けて “証” にしたり、保障するという行為は古代からありました。
とくに印象に残ったのは「円筒印章」と呼ばれる筒状の石に彫ったもの。横に寝かせて転がして印影をつけるのは、情報量も多くできるし偽造も難しそうで、なんか今よりも進んでる!? とも思ってしまいます。
また、粘土塊などに印影を付けて、貴重品を入れたものなどを包んだり縛ったりした結び目にそれを貼り付け、開封できないようにしたりもしていました。これがいわゆる「封印」のルーツでもあります。
■古代都市の信仰や情報の手がかり「コイン」
古代では、穀物や家畜など価値のあるものは物々交換されていました。しかし、腐らず壊れず、需要の高かった金属は交易品であるとともに “仲立ちや価値” を示す基準としても使われるようになりました。
そして、一定の純度や重量の持ち運びのし易い金属粒に「保証印」を押したのが「コイン(金属貨幣)」のはじまりです。「金属に保証の印影を付ける」とも言えて、前記の印章とも通じる部分がありますね。
コインが信用されて流通するには、重量や純度などを“保証した”という確かな印(しるし)が必要ですよね。なので、発行した都市の守護神やシンボル、都市名などを示す絵柄や文字が刻印されました。当時の人々は刻印を見て、どこの都市が発行したコインなのか認識して、安心して使用していたのでしょう。
これらのことから、いつの時代のどこで流通していたものか知ることができます。これは、まさに現代の貨幣とも同じことが、すでに備えられていたということですね。
今回の古代オリエント博物館 秋の特別展「おまもりとハンコとコイン~古代オリエントの偉大なる小さきものたち~」では、そんな古代の護符や印章、コインが初展示のものも含めて多数展示してあります。
会期は11月19日まで。悠久の古代や歴史のロマンに触れ、思いを馳せてみるのはいかがでしょうか?