「新橋駅前のC11 292号の履歴が分かりました!」
鉄道フォトジャーナリストの櫻井寛さんからこんな連絡が入った。
10月14日は「鉄道の日」だ。1872年10月14日に、新橋と横浜を結んだ日本最初の鉄道が開業したことにちなみ、1922年から鉄道記念日として鉄道省により制定された。新橋といえば、SL広場があまりにも有名。テレビのニュース番組などでよくサラリーマンがインタビューを受けているあの場所である。
漫画『新・駅弁ひとり旅~撮り鉄・菜々編~』の取材のために汐留の旧新橋停車場を訪れた際、監修を務める櫻井さんと漫画家のはやせ淳さんと一緒に新橋のSL広場にも立ち寄った。だが、ここで現在駅前に保存されているSLは新橋に関係があるのかという疑問が浮上したのだ。冒頭の櫻井さんの言葉は、この蒸気機関車の履歴を調べてくださった結果報告だった。
この機関車の車歴は以下。
[C11 292号]
- 1945年2月11日(昭和20年)日本車輌名古屋工場で竣工(まさに戦時中です)
- 同日 国鉄大阪局へ 姫路機関区に配属され、以降、播但線、姫新線などのローカル列車を担当する
- 1972年8月 播但線ディーゼル化により最終運行
- 1972年8月9日 姫路から品川へ回送
- 1972年9月16日 廃車 新橋駅前に保存
「新橋駅のC11について、調べてみたんですが、現役時代は新橋と縁もゆかりもない機関車ですね。ただし、1945年から1972年までの現役時代の27年間、姫路機関区から一度も移動しなかったことは、珍しいことです。移動がなかったということは、それだけ姫路で大切にされていたからでしょう。50年間、屋根もない雨ざらしの展示としては、極めて美しいと思います。鉄道発祥の地、新橋のメンツでしょう。相当、お金をかけてさび止めを施しているのではないでしょうか」
なんと、新橋駅前のSLは新橋とは縁のない機関車だったというのだ。
新橋といえば、「汽笛一声新橋の♪」の歌い出しで知られる「鉄道唱歌」を連想する。この場所に保存展示されているSLだけに、新橋に深く関わりのある機関車だと勝手に思い込んでいた。しかし、生涯を姫路機関区で過ごした生粋の関西育ちだったわけである。
「姫路機関区の補足ですが、機関区開設は1888年12月(明治21年)と非常に古いです。当時は山陽鉄道の終点かつ、岡山方面への前線基地でもあり非常に重要な機関区でした。1946年には、姫路第1機関区、第2機関区に分かれ、C11292は第1機関区へ。その後、山陽本線の全線電化にともない、姫路第1機関区の担当は、播但線、姫新線、赤穂線(山陽本線経由)となり、C11が11両、C58が3両配置されます。
C11は、播但線と姫新線を、C58は赤穂線を担当し、1972年8月を最後にディーゼル化。最終運行はC11292で、姫路第1機関区の最終在籍機関車がC11292となりました。歴史ある姫路機関区の最後を飾った機関車というわけです」(前出・櫻井寛氏)