■月見岩のある分岐からいよいよ岩場の連続

 高原ヒュッテのある国師ヶ原十字路から分岐点に着くと、そこには「月見岩」と呼ばれる大きな岩があり、月見岩の上から見る景色がまた良い。ここから山頂までは、さらに70分ほどかかる。

裏側から登ることができる月見岩。近くでみると大きい(撮影:山歩ヨウスケ)

 月見岩の一帯は草原となっており、ススキの中を歩ける秋は、特に綺麗になるだろう。草原からは展望がよく、景色を楽しめるが草原地帯を過ぎるとまた樹林帯の中に入り、乾徳山の中心部に進むにつれて岩場の連続となる。加えて山頂までは急峻な登りが続くので体力の必要になる区間でもある。

カミナリ岩の鎖場。足の置き場は多いが高さがあるので油断せずに登りたい(撮影:山歩ヨウスケ)

 難所となるような大きな岩だけでなく、ちょっと変わった岩を楽しめる。それが「胎内(たいない)」だ。修験者たちは岩の中をくぐる「胎内くぐり」をすることで身を清めていた。

岩の下を通って裏側に抜けられるが、かなり狭い(撮影:山歩ヨウスケ)

 急登を登り、いくつかの奇岩を越えると、山頂付近が見えてくる。乾徳山の山頂はスペースがなく、ゆっくりできる場所もないので、景色をみながら休憩をしたいと考えている人は登頂前に休憩することをおすすめする。山頂直下には景色がよく、座れる場所もあるのでゆっくりするのにぴったりだ。

乾徳山の山頂付近。岩が積み上げられたような山頂である(撮影:山歩ヨウスケ)

 山頂直下で待ち構えているのは「鳳岩(おおとりいわ)」。体感ではほぼ垂直の岩で、足をかける箇所はあり、鎖を補助的に使いながら三点支持で登っていく。滑り止めの付いたグローブなどを使うと滑らず、手も汚れないのでおすすめだ。

鳳岩を真下から見ると、頂上が見えないことにまた怖さを感じる(撮影:山歩ヨウスケ)

 鳳岩には迂回路もあるので、高所や腕力に自信のない人は利用するといい。鳳岩を登りきると山頂である。山頂からは富士山がバッチリ見えるのと同時に、切り立った山頂から下を見た時の高度感も楽しむことができる(高所恐怖症の人にとってはかなり怖い)。

乾徳山の山頂には標識と祠がある(撮影:山歩ヨウスケ)
山頂からの景色。富士山が綺麗に見える(撮影:山歩ヨウスケ)

 下山については周回して国師ヶ原十字路まで戻るルートもあるが、登ってきたルートを戻るのが展望もよくておすすめだ。

■安全への配慮をしっかりし乾徳山にチャレンジしよう

 初心者のスキルアップにおすすめということで乾徳山を紹介したが、高低差のある岩登りは誰でも安全にできるものではなく、危険も伴うのでヘルメットの着用を強くおすすめする。それから、日帰りが可能なコースではあるが、距離約10km、高低差は1,200m以上になるので体力が必要であることも理解しておくべきだ。急峻な岩場を越えれば、ご褒美の絶景が待っている。

 岩場やアルプス登山へのスキルアップとして乾徳山に出かけてみてはどうだろうか。

●【MAP】乾徳山登山口駐車場