●自業自得の事態4  装備(寝袋)を忘れる

装備を忘れると、登山中止の判断も必要だ(撮影:北村一樹)

 筆者が登山中に非常に焦った事態が、あるはずの装備が入っていなかったという、目を疑いたくなる現実だ。時計を着け忘れた、グローブがないといったことは対処できたが、寝袋を忘れた時は思考が停止するほどに絶望した。

 時期は夏、山小屋のそばにあるテント場だったので、最悪の事態は回避できる環境だったが、これが冬山で人のいない場所だったらと思うとゾッとする。登山計画書も提出して準備も万全だと思っていたので、未だになぜバックパックに入れ忘れたのかが分からない。

 この日はダウンジャケットをはじめ、予備のウェアを着たりバックパックに足を突っ込んだりして夜を過ごした。

 こうした登山の装備忘れは大なり小なり発生する。信じられないかもしれないが、登山靴を忘れたり、バックパックを背負い忘れてきたというのも聞いたことがある。生命に危険を及ぼすほどの装備忘れが発覚した時は、事前なら登山中止、行動中なら直ちに下山する判断が必要だ。

●自業自得の事態5  装備が破損する

テントは破損すると致命的な状況に追い込まれる(撮影:北村一樹)

 冬の富士山で雪山訓練をした下山途中、登山靴のソールが剥がれたことがある。この他にもテントが不注意で破けたり、沢登り中の浸水でヘッドライトがつかなくなるなど、筆者にとって装備の破損は登山の中で最も焦る事態だ。

 沢登りで焚火にあたりながら眠りにつき、真夜中に火が強まったと思って目を覚ましたら、先輩の沢靴が燃えていたこともあった。登山は中止となり、翌日に先輩はやむなくサンダルで下山した。

 破損どころか跡形もなくなったらどうすることもできないが、リペア用のテープや部品を携行することで、不測の事態への対応は可能だ。数日に及ぶ登山の時は必ず装備に加えておくと良い。

■緊急事態への備えは万全に

万全の準備で山頂を目指す(撮影:北村一樹)

 登山では必ずと言っていいほど起きる緊急事態。冷静な判断ができないほど大きなミスが起こり、予測できないことを予測するということは不可能なだけに悩ましくなるが、過去の経験や先人の記録から備えをすることはできる。

 備えることで対処できることもあるが、難しい時は登山を中止して撤退するといった判断も大切だ。無理せず安全な登山を意識していきたい。