■知らないと怖い加水分解

縫い目付近の白く変色した箇所が、加水分解によってコーティングが浮き上がった部分(撮影:笹田けいこ)

 今回の失敗はデイパック本体の劣化である。外側はさほど異常がなくても、内側は破れたり、切れたりしていた。筆者が使っていたデイパックは、もともと登山目的の仕様ではなかった。しかし、登山メーカーのバックパックでも、加水分解による劣化が起こる。

 多くの登山用バックパックは、防水のために、生地の裏側にポリウレタン(PU)コーティングを施してある。このPUコーティングは、濡れたままにすると加水分解が進む。コーティングがはがれると防水性能がなくなるので、今回の筆者と似たような状況が起こりうる。

 実は、念のために筆者の登山用バックパックを取り出して丁寧に点検してみたら、加水分解している部分を発見してしまった。白く変色し、コーティングが浮き上がり、少しだけベトベトする。サイドのポケットにザックカバーやレイングローブ、レインハット、スパッツなどの雨用の小物を分散して収納していた。

 小雨の中で装着し、雨が止めば濡れたものを収納するのだから、他の部分よりも水分が付着しやすい。それぞれの小物は、使用後に洗濯し、よく乾かしてから収納していたが、バックパックそのものはファスナーを開けて陰干しする程度だったのが原因だと考える。

 加水分解を防ぐには、濡れたあとは水分吸収率の高いタオルやシートなどを使って素早く拭き取ってから乾かすことが重要だ。

 雨による加水分解はバックパックだけに起こるのではない。見えないところで進んでいることがあるので、レインウェアの内側、テントやシュラフカバーの細部もチェックを忘れないようにしよう。

 突然の雨はいつ来るかわからない。折り畳み傘で守ることができる範囲は、思っているよりも狭いのだ。大切なことは、山でも街でも雨対策をすることと、濡れた後はそのままにせず、しっかりと手入れすることである。