阿寒摩周国立公園のシンボルともいえる「阿寒岳(あかんだけ)」。そのうち日本百名山の一つに挙げられるのが、8つの火山体が集合した火山群の主峰である「雌阿寒岳(めあかんだけ)」だ。

 標高1,499mの雌阿寒岳は、比較的手軽ながらも大迫力の景色が見られると、全国のハイカーから人気を集めている。今回は、そんな雌阿寒岳の魅力をお伝えしていく。

■火山・森・湖が1日で満喫できる

見るたび水の色が変わる湖「オンネトー」(画像提供:あしょろ観光協会)

 雌阿寒岳は、北海道の豊富な自然に囲まれた山である。まず、麓で目を惹かれるのは、周囲2.5kmの湖「オンネトー」。季節や天気、見る角度などで見るたびに色が変わるため、神秘の湖とも言われている。

360度ぐるりと森が囲む

 美しい湖を抜けると、目の前に広がるのは一面の森だ。5合目付近まではアカエゾマツやトドマツ、ハイマツなどの深い樹林帯に覆われ、5合目を過ぎると高山植物が現れる。植生の移り変わりを観察しながら登れるのも雌阿寒岳の特徴の一つだ。大きな景観の変化はないものの、まるで森に包まれたかのような気分に浸ることができるだろう。

阿寒富士の山容を独り占め

 7合目を過ぎると森林限界を迎え、緑の山から荒涼とした砂礫帯(されきたい)へと大きく姿が変わる。8合目あたりからは阿寒富士(あかんふじ)が姿を現し、何にも遮られず、独立峰の展望を独り占めできる。この光景は、雌阿寒岳でしか味わえない。

阿寒富士から望む雌阿寒岳

 体力や時間に余裕があれば、往復1時間半ほどかけて阿寒富士を登ることも可能だ。阿寒富士の山頂からは、雌阿寒岳の雄姿を望むことができる。

■頂上からの景色は圧巻

ダイナミックなクレーターと青沼

 頂上から望むのは、吸い込まれそうなほどにダイナミックなクレーター。活火山のため、火口付近には植物がほとんど生育しておらず、砂と土だけの火山独特の光景を目の当たりにする。硫黄の臭いや噴出音も体感でき、目だけでなく五感全体で火山の凄さを感じることができるだろう。

 クレーターの中にあるのは、透き通るほどの青さが魅力的な「青沼(あおぬま)」だ。オンネトーと同じく、季節や天気、見る角度などで見るたびに異なる色合いを見せてくれる。

反対側には別の火山体の火口も望む

 クレーターとは反対側では、道東の雄大な景色が一望できる。果てしない大空と広い大地、北海道を代表とするあの曲が頭の中に流れてきそうだ。阿寒湖の奥には、雌阿寒岳と同じ阿寒岳である雄阿寒岳が広がり、北海道の自然の豊かさを再確認させられる。