それからどれくらい時間が経ったのだろうか。目を覚ますと、嵐はますます酷くなっており、テント内には5cmくらい水が溜まっていた。慌てて外を見ると、テントが水没しているのがわかった。そうこうするうちに水位がますます上がってきて、寝袋が浮かんでいる。パニックになりそうになりながら、必死に次の行動を考えた。テントと寝袋を捨て、食料、水、貴重品、その他持てるだけ持って、退避しよう。
その時、数人の男性の声が聞こえ、複数の懐中電灯にテントが照らされた。外から声がかかる。
「大丈夫か?」
外に出ると、合羽を着た5~6人の中年男性が、懐中電灯を持って立っていた。
「おお、無事でよかった」
男性たちは代わる代わるそう言った。
聞くところによると、この男性たちはここの村の住人。野営地を探して歩いている筆者の姿を目撃していたらしく、広場で野営していた筆者を心配していたのだという。
山で心細く怖い思いをしていたことを伝え、礼を言った。人に出会ったことで、一気に全身の力が抜けて、水浸しのその場に座り込んだ。男性たちは筆者を立たせ、山の危険性とこれからどうすべきかについて、アドバイスという形でいろいろ注意をしてくれた。男性たちが本当に筆者のためを思って言ってくれているのがわかり、ありがたくて仕方がない。
最後に「これからも気を付けて山を楽しみなさい」と言われ、改めて頭を下げ、男性たちに礼を言った。