■積雪期の伊吹山、素手でピッケルを握る男性

寒い時期の登山では万が一に備えて手袋は4双くらい持ち歩く。寒い時には重ねて使用もできる(撮影:兎山 花)

 冬の伊吹山で雪山登山をしているときのことである。5合目辺りで素手でピッケルを握っている男性とすれ違った。その日は天気は良かったものの、素手で冷たい鉄製のピッケルを握れるような暖かな気温ではなかった。なぜ手袋をしていないのかと筆者が尋ねると、下山途中で手袋を無くし、予備の手袋もないため仕方なく素手で歩いているということであった。

■夜は歩かないからヘッドランプは不要だという登山者

ヘッドランプと一緒に予備の電池やコイン(電池蓋を開けるため)をセットで持つ(撮影:兎山 花)

 ヘッドランプは万が一山で日没を迎えてしまって、歩かなければならない事態になったときの必需品である。山の中は日が暮れると明かりが一切無く、さらに樹林帯の中だと月明かりも届かないので真っ暗闇になる。筆者はヘッドランプと予備の電池は必ず持ち歩くようにしている。暗闇で電池が切れたときはヘッドランプの電池交換さえ難しいので、ソロの場合はヘッドランプの電池交換のための明かりを持ち歩く登山者も周りにいるくらいだ。しかし、夜は歩かないからヘッドランプを持たないという登山者に出会うことがたまにあり、筆者は少し心配になってしまう。

■白山で動けなくなり登山道脇でうずくまる高齢男性

お花畑が美しく、夏多くの登山者が訪れる白山(撮影:兎山 花)

 筆者が毎年一度は必ず登る山が白山である。この山には、毎年登りたいと筆者を魅了させるほどの、たくさんの高山植物のお花畑があるのだ。別当出合登山口から白山山頂へ続く砂防新道は、登山道が整備されていて、水場やトイレも数か所あるため、週末はいつも初心者から上級者まで多くの登山者で賑わっている。整備されているといえども、日帰りの場合、山頂まで往復で8時間弱かかる山である。

 初心者でも体力のある登山者は登れているが、たまに体力の限界まで歩き続けて疲労しきっている登山者に出会うことがある。筆者が出会ったとある高齢の登山者もそのひとりで、疲労でもう一歩も歩けなくなり登山道の脇にうずくまっていた。同伴の登山者ではどうすることもできず救助要請を頼んだそうだ。

■登山で備えよう、万が一のときの装備と体力

 山では何がおこるかわからないと筆者は常に思っている。目的とする山行にどんなリスクが潜んでいるかを事前に考えて装備を備えることはとても大切なことである。一方で備え過ぎても荷物は重くなるばかりでかえって危ない場合もある。しかし、どんなに備えていても山では想定外のことがおこるものであり、最終的に一番大事なのは“体力”であると筆者は思う。