■大自然の中で過ごした、お試し移住の10日間

 お試し移住期間中の10日間は、リモートで仕事をしながら過ごした。涼しい午前中に仕事を済ませ、午後の暑くなる時間からは野尻湖や黒姫高原へ出かける。泳いでは休憩し、本を読んでゆっくりと過ごした。

 近くにある黒姫高原には、いわさきちひろ記念館や黒姫童話館があり、トトロが出るかもと思うようなワクワクする森の散歩道も大好きな場所となった。

黒姫高原にある森の散歩道。奥へ進むとトトロが出てきそうな不思議な場所だ(撮影:佐野葉月)
お試し移住施設から車で10分の野尻湖は、透明度が高く泳ぐのにぴったりだ(撮影:佐野葉月)

 産直市場は新鮮な地元野菜が多い。そして何より安い。真っ赤に熟れたトマトはこれまで食べたトマトの概念を覆した。信濃町といえばとうもろこしも有名で、生で食べても驚くほどおいしかった。

産直市場には、朝早くからとうもろこしを目当てに長野県内から訪れる多くの人が並ぶ(撮影:佐野葉月)

■暮らしてみてわかったことも

 暮らしてみて、意外だったことも。一つは、生活コスト。野菜は新鮮かつ安価だったが、ガソリンや日用品などは大阪の自宅周辺のほうがかなり安かった。この辺をトータル的に考え生活コストを計算する必要があると感じた。

 二つ目は、子どもが外で遊べる場所が少ない点。「子どもには自然の中でいっぱい遊んでほしい」という願いをもっていたが、外で遊ぶ子どもたちはほとんど見かけなかった。都会と比べると、公園など遊び場が少ないこと、また家同士が離れているため、何をするにも大人の送迎がないと不便であることを実感した。

お試し移住施設の目の前に広がる景色(撮影:佐野葉月)

■お試し移住は、夫の気持ちをも変えた

 「移住は絶対しないからね」と渋々長野までやってきた夫はというと、時間経過とともに心境も変化しはじめ、大阪に戻るころには「移住、アリかも」と言うまでに。現在では、仕事や住居などの準備を進め、筆者より移住に前向きだ。

 短期間でも「暮らす」ことで生活イメージが膨らみ、夫に心境の変化をもたらしたようだ。働き方からはじまり、保育園や学校の環境、買い物、病院の場所、ゴミの処分や地域の人々の雰囲気など、リアルな生活を通してこそ、見えてくるものがある。

 夫と一緒に「お試し移住」を経験することで「これからどのように暮らしていきたいか」を話し合うきっかけにもなった。

 移住に力を入れている自治体は信濃町だけではない。滞在期間も、2泊3日〜1週間の短期から、数か月〜1年の長期までと幅広い。

 移住促進を目的としているため、比較的安価で利用できるところが多く、関東圏でいうと、温泉で有名な神奈川県の箱根町や群馬県の沼田市なども積極的にお試し移住の受け入れをしている。

 長年の都会暮らしに慣れている人にとって、田舎暮らしは環境が大きく異なる。だからこそ、実際に暮らす「お試し移住」を通じて希望するライフスタイルにマッチするのかどうか体験することをおすすめしたい。

●今回体験したお試し移住施設

・施設名:信濃町ふるさと移住体験施設
・住所:長野県上水内郡信濃町大字富濃3772-1
・電話:026-255-1007

・ホームページ:https://shinanomachi-iju.jp/experience/

●記事内のその他お試し移住施設ホームページ

・神奈川県箱根町

URL:https://www.hakonestayle.com/

・群馬県沼田市

URL:https://numata-kurashi.com/immigrate/trial/

※この記事の情報は2023年7月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。