■ラストチャンス! さらなる大物が……
最後のポイント。色気のある深く抉れた流心にパラシュートアントを流すと、激しい水飛沫と共にフライがひったくられました。明らかに段違い、一番の引きです! 上流に逃げようとする魚にプレッシャーをかけ、じわりじわりと寄せてくると、一緒に何匹も付いてきました。魚影が濃いポイントの“あるある”ですね。この日も何度もそんな場面がありました。周りに群がる魚と比べても一際大きいサイズです。40cmは言い過ぎですが、30後半はあります。
「最後の最後にもってるな〜」早くもネットに入れて写真を撮る算段してほくそ笑んでいると、気の緩みはテンションの緩み、重みのなくなったラインが流れに虚しく漂っていました……。
油断大敵、捕らぬタヌキのなんとやら。先に上がっていた先輩にその話をすると、ニヤニヤしながら携帯を出し、写真を見せてくれました。そこには、先ほどバラしたのと同じようなサイズ、立派なヤマメが写っていました。「これがメスでしょ。その前に釣ったオスの写真が……」悔しくて、帰り際に危うく次の日の予約をしてしまいそうでしたが、すでに予約が埋まっていたので助かりました(笑)
■程よい管理具合! ビギナーにもおすすめ
釣り自体に加えて、四季折々の渓の表情の移り変わりを楽しむのも渓流釣りの魅力です。春から夏へと向かうこの時期も目が離せませんが、梅雨と重なるために雨の影響を避けては通れないのが難ですね。
その点、今回のフィールドのように予約制によって入渓者を把握できる釣り場は安心感があります。漁協の方は上流のダムの放流具合も把握しており、各河川の状況を熟知しています。釣りに適しているかどうかジャッジしてくれるのでありがたいですね。実際に取材の翌日、本谷は予約を受け付けていました(すでに予約がかなり入っていました)が、中ノ沢はクローズを決定していました。
川そのものは自然渓流ですが、各入渓ポイントには、階段やスロープで川までの道が切ってあります。快適な管理棟とトイレ、雨を凌げる東屋もありますし、釣り上がった後は舗装路を歩いて戻れます。特に初心者には何かとハードルが高い渓流釣りですが、新たに始める方にも安心できる釣り場だと思います。程よい管理具合ですので心地よく過ごせます。当然、遊魚料金は他のエリアより高い設定となりますが、その価値を考えるとリーズナブルではないでしょうか。
夕方まで雨の中で釣りを続け、すっかり濡れそぼった二人でしたが、朝二の足を踏んでいたのが嘘のように、溢れんばかりの笑顔で帰路に着きました。素晴らしい釣り場ですので多くの釣り人と共有したいですが、これ以上人気になると予約が取りづらくなるかもしれません。海外のフィールドでは多く見られるスタイル。日本でも増えていくと、渓流釣りの楽しみ方の幅が広がりますね。