「コマクサ」と聞くと、心が躍る。初めてコマクサに出会ったのは、北アルプスの燕岳。それまで写真でしか見たことがなかったコマクサを直接目にした感動を今でも覚えている。
燕岳以外にも「コマクサの大群落」が見られる場所はあるが、多くが何時間も歩く場所にある。登山口までの移動もかなりのものだ。だからこそ価値があるのだが、ゆるいトレッキングが大好きな筆者にとってはハードルが高い。
そんなとき、偶然出会ったのが長野県の浅間山の西方に位置する三方ヶ峰(さんぽうがみね)のコマクサだ。おそらく首都圏から最も短時間でコマクサに会える山、三方ヶ峰のコマクサやその周辺の魅力について紹介する。
■高山植物の女王、コマクサとは
コマクサは、漢字で「駒草」と書く。その名前は、花の形が馬の顔の形に似ていることに由来する。高山の砂礫の稜線という、他の植物が生えないような厳しい環境の場所で美しいピンク色の花を咲かせ、「高山植物の女王」と呼ばれる。
見ごろは地域によって異なり、三方ヶ峰のコマクサは例年6月下旬から7月下旬といわれるが、筆者が8月に三方ヶ峰を訪れた時でも十分見ごたえはあった。
■池の平駐車場からスタート
今回紹介する三方ヶ峰は、見晴岳(みはらしだけ)、池の平湿原とセットで巡るコースが一般的。スタート地点の標高2,060mにある池の平駐車場は普通車600円で、トイレも整備されている。
駐車場から道路を挟んだ東篭ノ登山(ひがしかごのとやま)、西篭ノ登山(にしかごのとやま)の登山者の駐車場にもなっているので、ただ人についていくのではなく、自分のコースを確認すること。一本道ではないが案内板が整備されているので、地図を見ながら進もう。
■高低差の少ないトレッキングコース
駐車場を出て見晴歩道(登山道)へのコースをとると、村界の丘、雷の丘、雲上の丘、ピグミーの森、見晴岳、三方ヶ峰、池の平湿原と左回りで周回できる。右回りの場合は湿原をめぐってから、三方ヶ峰に登り、逆コースで駐車場に戻る。ゆっくりめぐっても3時間の行程だ。
コケモモ、クロマメノキ、ハクサンシャクナゲなどの多彩な高山植物にしばしば足を止めながら、緩やかなアップダウンを繰り返し、最初にコマクサに会えるのは見晴岳(標高2,095m)頂上付近。南側の斜面が群落地になっており「見晴コマクサ園」と呼ばれる。
フェンスが設置され少し残念な気持ちにもなるが、駐車場から40分と誰でも簡単に訪れることができる場所であり、保護のためにはやむを得ない。
続いて三方ヶ峰(標高2,040m)を目指そう。こちらも山頂のガレ場の南側の斜面が「三方コマクサ園」と呼ばれ、フェンス越しにコマクサの群落を鑑賞できる。
見晴岳や三方ヶ峰からは晴れていれば、遠く富士山や南アルプス、北アルプスの山々も望むことができる。
コマクサを堪能したら、三方ヶ峰から池の平湿原に下り、湿原を散策しよう。木道を歩きながら、湿原の花々が楽しめる。
駐車場から三方ヶ峰の往復コースも可能だが、高低差が少なく花が多いのが魅力であるため、周回がおすすめだ。