■ルアー・フライのメリット・デメリット

 ルアーとフライ(フィッシング)、それぞれの渓流釣りでの相対的な特性を考えてみます。

スピニングリールだけでなく、ベイトリールを使った渓流ルアーも人気です

 ルアーは手返しの良さで、スピード感ある釣りが可能です。フライがひと流しする間に何倍も流すことできるので、手数の多さでは有利ですね。遠投も容易ですし、狭いカバーを通すような低弾道も可能です。ルアー自体のアピール力もあります。レンジを変えることも自在に行えますし、アクションのバリエーションも豊富でしょう。

 逆に不自然さも内包しているのは否めないですね。見切られやすく、場荒れしやすいところがあります。フライに比べて、特にショートレンジのアキュラシーは、使い手の技量次第というところも。

大きめのドライフライ、ウェット、太い流れでルアーに対抗するためにストリーマーやチューブフライまで用意して臨みました

 一方、フライは水面を意識した魚に効果的なドライフライの釣りを始め、幅広い毛鉤(フライ)のバリエーションで攻めることができます。魚たちが普段から捕食している虫をイミテートしたり、米粒以下のサイズも使用できます。アピール力あるバルキーなフライでリアクションバイトも期待できます。ショートレンジでは同じ場所に繰り返しキャストすることも容易です。

 ただ、どうしてもフライや流し方に合わせてライン類を変更、調整する必要があります。(ロールキャストやボウ&アローを駆使するにせよ)キャスティングのスペースが必要ですし、ポイントからポイントへの移動もロッドが長い分、手間と時間がかかります。

 どちらにも言えるのは、腕前次第! それぞれの釣りにどれだけ精通しているか……。そこが要ですね。

■いざ勝負! 粘って一匹

 数年ぶりに訪れた山あいの渓。数日前のまとまった雨の影響も収まり、水量は平水より少なめです。それでも、厚みと押しの強い流れは、見渡す限り渡渉を許してくれるような箇所はありません。一見して「不利だな」と思いました。さらに入渓点には先行者の車が……。

 入渓点は良型が期待できるポイントだらけの場所。ルアーの方が手早く準備ができるために、(たぶん)遠慮しつつも小林さんがキャスティングを開始します。その様子を横目に、僕もフライを流します。お互いに時間をかけてじっくりと探りますが、まるで反応がありません。

タニウツギ越しのキャスティングシーンを撮っていたら(まさかの)ヒット!

 その後、左岸に沿って目ぼしい流れを探っていきますが、ルアーやフライを追ってくる魚影すら見かけません。やがて、遡行を阻む大堰堤が近づいてきました。もう少しで引き返し地点です。対岸付近へ遠投していた小林さんを撮ろうとレンズを向けていると、ファインダー越しにも魚がフッキングしたのがわかりました。興奮して見守っているとフックアウト……。残念そうな小林さんを尻目に僕は上流へ向かいます。ふと振り返ると、嬉しそうに何かを叫んでいる小林さん。先ほどの場所の周辺を攻め続け、粘り勝ちのキャッチです。

激シブ! 型が小さくても、たった一匹でも大いに盛り上がります

 渋すぎる反応の中から一匹は、釣った本人だけでなく僕にとっても嬉しい魚でした。わずかに紫がかった美しい魚体は、この川のイワナの特徴がよく表れていました。