長野県の山奥でも初夏の様相になってきました。日本有数のスキーリゾート志賀高原では新緑の中、ウグイスの囀り(さえずり)が響いていました。この一帯から流れ出すのが、渓流釣りで有名な「雑魚川」です。

 解禁は4月中旬で、長野県内の漁協の中でも飛び抜けて遅い設定となっています。例年なら解禁当初、一帯は雪に覆われています。アプローチとなる「長野県道502号奥志賀公園栄線」通称・奥志賀林道は、奥志賀高原スキー場下のゲートが封鎖されており、徒歩でしかその先へ行けません。そもそも標高も高く、非常に厳しい自然条件の中での釣りを覚悟しなければいけません。

 今月19日から冬季通行止めが解除され、一気にアクセスのいいフィールドが広がりました。いよいよ本格的な渓流釣りシーズンの始まりです。

■放流に頼らない! それでも魚が息づく注目の漁協

奥志賀高原スキー場への分岐にある林道ゲート付近。栄村方面への車道が開通すると多くの釣り人がやってくる

 長野県とその近隣で渓流釣りをしていれば、きっと名前くらいは聞いたことがある雑魚(ざこ)川。志賀高原のスキー場が密集する中心エリアに端を発し(最上流域は禁漁)、栄村の「秋山郷」で中津川と合流した後、深い渓谷は信濃川へと注ぎ込みます。

橋の上から流れを望む。今年は雪が少なく、さらにまとまった雨も降っていたなかったため水量は少なめだった

 林道は概ね川に沿っています。ドライブしていても気持ちのいいシーズン最盛期、多くの釣り人の姿や、道端の駐車スペースに車が停まっているのを見かけます。地元、長野ナンバーより、関東エリアを中心に他県ナンバーの方が多いくらいです。

緑に包まれるような爽快なドライブが楽しめる奥志賀林道

 流域に幾つもある支流群は、一部を除いて禁漁です。これが“種沢”としてイワナたちの繁殖を支えています。地形条件にも恵まれており、人の手に頼らずとも、自然の状態のままで魚たちが雑魚川本流へと降りてきては、再び産卵のために禁漁の支流へと戻っていきます。渓流釣りフィールドとしての理想系ではないでしょうか。

 実は日本の河川、特に大都市圏からのアクセスに恵まれた多く(アプローチが困難な源流帯以外)では、漁協による放流事業に頼らないと魚の維持が難しいのが現状です。そんな中、志賀高原漁業協同組合が管轄する雑魚川では、自然繁殖する原種イワナだけが息づいており、モデルケースとしても注目されています。

■艶やか! 個性的な原種イワナ

数を釣る訳でも、大物でなくてもいい。この美しさは釣り人を満足させるでしょう

 山奥に生息することが多いイワナですが、地方変異による亜種がいくつかに分類されています。厳しい自然環境で生き残るために、生息場所に溶け込むような体色であることが多いですが、さらに川による個体差、個性と言っていい特徴が見られるのも興味深いです(複数のタイプが混在する川もある)。

 中でも、ここ雑魚川流域のイワナはかなり特徴的です。鮮やかな橙斑が体側に散りばめられ、腹部の橙色も艶やかです。上から見ていると地味な姿なのですが、身を翻した瞬間、派手と言っても過言でないほど煌びやかな魚体が目を引きます。

釣りをするうえで欠かせないのが“観察”。石の裏には大型のカワゲラとカゲロウの幼虫が(やらせではなく、偶然)並んでいました

 今まで一度も放流された履歴がないという雑魚川。宝石のような原種イワナの美しさは釣り人を魅了します。