■ローマのど真ん中でも喧騒とは無縁
水鳥の鳴き声を聞きながらどんどん歩いていくと、徐々に街中の建物が目につくようになってきた。川の真ん中に盛り上がってできたティべリーナ島が見えてくると、もうローマのど真ん中に来たことになる。この上は庶民的なトラットリアやバールがひしめくトラステヴェレ地区。地元民から観光客まで、昼も夜もごった返しているエリアだが、川沿いはそんな喧騒とも無縁。もうしばらくこの長閑なウォーキングを満喫したかったので、ひとつ先の中世時代に造られたシスト橋から地上へ出ることにして、今しばらく川沿いの風景を楽しむ。
目的のシスト橋に着いたら、目の前の階段をずんずん登っていく。橋の袂に出た途端、車と人混みに圧倒されそうになるが、ここはしばし我慢して人混みをかき分け、目的のボタニカル・ガーデンまで一気に下町の迷路を突き進んで行こう。
トゥリルッサ広場からトラステヴェレの迷路を抜けて、セッティミアーナ門をくぐる。ルンガーラ通りに出るとすぐ、ボタニカル・ガーデン入り口の標識が見えてきた。この庭園は実はローマ・サピエンツァ大学附属の植物園で、研究施設の一部なのだが、一般にも有料で開放されている。
テヴェレ川右岸から高さ88mのジャニコロの丘に向かって高低差のある12ヘクタールの敷地内には、南国の椰子の木や日本庭園、ハーブ園、バラ園、竹林など、世界各地から集められた珍しい植物群が生息している。ルートに沿って歩いていくと、ローマ市街を一望できるジャニコロの丘の麓に行き着き、そこからローマの街の景色を垣間見ることもできる。
園内を一周すると2時間以上はかかり、結構な距離を歩くことになる。アップダウンのある道や階段を昇り降りしながら、水辺の緑から中世の街並み、竹林など珍しい植物の群れまで、次々と移り変わる景色がなんとも楽しい。たった半日とは思えないほど多彩な体験ができたアーバン・トレッキング、その魅力に取り憑かれる人が増えている理由がようやくわかった。