■ステップアップ練習登山2座目:谷川岳(標高:1,977m 日本百名山)

頂上まで緑が途切れないが中盤は所々で鎖場も登場する本格的な山行。尾根沿いを登って行くため眺望も楽しめ飽きさせない

 2座目は群馬県、新潟県の県境に位置する谷川岳である。こちらも標高1,319mの天神平駅までロープウェイを利用することができる。しかし茶臼岳とは違い、より本格的な登山という印象だ。ここでは富士登山用の装備で山行することをお勧めする。そうすることで慣れたギアで本番に臨むことができるからだ。

 尾根沿いを登っていくため、所々視界が開ける場所もあり眺望も楽しめる。一方で中盤は鎖場が多く、山全体が蛇紋岩という滑りやすい岩でできているため、急がずに着実に登りたい。

所々で視界が開け眺望を楽しめる。初夏でも雪渓が残る西黒沢を望む

 谷川岳は天気の変わりやすい山としても知られている。強い日差しで汗が吹き出していると思ったら、みるみるうちに辺り一面真っ白の霧に包まれ、日本海側から自然のクーラーのような涼しい風が吹いてくる、などということがよくある。稜線上は風も強く荒れやすいため、天気予報が悪い時には迷わずに山行を延期した方がよい。

 ギアは雨具、手袋はもちろんだが、特に靴については富士登山本番で履く登山用の靴(※)を必ず履いていくようにしたい。滑りやすい岩場が連続する登山道では靴の質はとても重要だ。ここで違和感なく履ければ、富士登山本番でも問題はない。

登山用の靴(多くのミドルやハイカットの場合)とスニーカーの違い

■富士山登頂を成功させるために

 以上、まずは難易度が低く標高2,000m近くを味わうことを優先しての茶臼岳、そして富士登山での装備で事前練習する谷川岳の2座を紹介した。5月に茶臼岳、6月に谷川岳、そして、7月から8月に富士山というイメージだ。

 しかし、冒頭記載したように難易度という点においては2座とも富士山には遠く及ばない。日々の節制と最低限の体力づくりは欠かせない。そのうえで登山に慣れるためにこのステップアップ練習登山に取り組んでもらうのが良いと思う。

 富士山登頂が成功した時には、大きな達成感を味わえることは間違いない。途中で断念することのないよう、楽しみながらしっかり準備していくのがよいだろう。

浅間神社の鳥居とご来光。雲海から徐々に登ってくる太陽と刻々と変化する空の色はまさに非日常。ここでしか見られない光景である